第204話 ページ14
(赤司side)
少し暖かい春風が吹く。
その風は毎日、少しずつ暖かくなってきている気がする。
今日は3月14日。
そして今は朝練に向かっている途中だ。
吹く風は少し暖かいがまだ肌寒いくて吐く息は白い。
その白い息が消えていくのを見ながら最近のことを思い出す。
それはAからチョコパイをもらってから今日までのことだ。
今日、要するにホワイトデー。
とりあえずお礼のチョコをあげるというのは決まっていた。
だが、問題はAからのパイの形だ。
あれさえなければこんなに悩まなかった気がするんだが。
まあそれは置いといて、もしもあれが僕への好意の表れだったら。
それなら……。
でももし違ったら恥ずかしすぎる。
そうやって一人で悶々としていた。
それでその結果。
Aに告白することにした。
そして今に至る。
いつもより鼓動が速いのが何と無く自分でもわかる。
最初恋愛になどには興味無くて、他の人が恋をしているのを見ても特に何も思わなく、
自分とは関係ないな、と思っていた。
……まさかそう思っていた自分が恋に落ちるとは。
一人の女子転校生は普通の人とは少し、いやかなり違っていて。
暗い過去を持ち、幼少期の記憶を失い、
笑えなくなっていた。
彼女は不安定で強いかと思えばもろくて崩れそうな一面もあって、
支えてあげなければ壊れてしまいそうだった。
そんなAに強く惹かれて。
全く自分は馬鹿だな。
と思い口元を緩めた。
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