天使ちゃんの作戦 ページ22
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放課後の軽音部、今日も顔を出してみる。
あれから忠義とは何事も無かったかのように接しているけど、なんとなく気まずい。
そんな中軽音部に顔を出すのはやっぱり忠義の様子が気になるからだ。
そしてもうひとつ、目的がある。
今日は珍しく部活が終わるまでだらだらと部室の隅の方で待っていた。
「ほいじゃ今日はここまでやな。
お疲れさーん」
信ちゃんの一言でみんなが帰り支度を始める。
私はその様子を頬杖をついて眺めていた。
真っ先に私のところへやってくるのは、もちろん…
「A先輩ー!
終わりまでいるの珍しないですかー?」
亮ちゃんや。
「んーなんででしょう?」
嬉しそうな亮ちゃんに向かって、これ以上ないってくらいに万遍の笑みを浮かべる。
一瞬だけ目線を外して忠義を見ると、すごく傷ついたような顔をしていた。
その顔に心がちくり、と痛む。
「もしかしてー俺のこと待っててくれたんすかー?」
そんな忠義に気付いていない亮ちゃんは相変わらず上機嫌で話を続ける。
「別に待ってたわけやないねんけど〜
亮ちゃんちょっと顔貸してくれる?」
なんて言えば喜んでついてくる。
おつかれ〜と言って部室から出た。
忠義も隆平もすばるもみんなぽかんとした顔をしていた。
後ろにいる亮ちゃんに至っては嬉しさのあまりタレ目が落っこちそうなくらい。
「A先輩〜!
やっと俺と付き合うてくれる気になったんすかー?」
人通りのない廊下、少し行ったところで亮ちゃんが冗談交じりに言う。
真剣じゃないのはどうせ今日も振られるって思ってるからやろ?
驚かせたるわ。
「ええで。別に」
「え?」
振り返ると案の定亮ちゃんはびっくりした顔をしていた。
「せやから、付き合うてもええ言うとるやん」
「ほんまですか?」
「ただし、あたしな、好きになれへんけどええ?」
「…」
我ながらなんて最低なこと言うてるんやろう?
亮ちゃんはこんなに真っ直ぐに想いを伝え続けてくれてるのに。
私は自分勝手な理由でそれを利用しようとしてる。
亮ちゃんはしばらく黙ったあと
「それでもええです。
絶対に俺のこと好きにさせてみせる」
そう言って私の手を取って歩き始めた。
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作者名:神八爽蘭 | 作成日時:2020年2月28日 18時