オレンジくんの焦り ページ13
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たっちょんがドラムを始めた頃、一緒に出来る何かがしたくて親にベースを買ってもらった。
嬉しくて毎日のように弾いとった。
たっちょんも俺がベースを始めたって聞いて一緒にセッションしよ言うて嬉しそうにしてはったな。
Aちゃんはその様子を楽しそうに見とった。
いっつも目キラキラさせて天使みたいな笑顔で、さすがや〜、2人とも上手〜って拍手しながら褒めてくれはった。
その姿がめちゃくちゃかわいくて、俺たちはもっともっと上手になろうって練習したんや。
そしてもう1人、ようセッションに参加してくれはる人がおった。
その人は信ちゃんの友達で、俺らなんかよりもずっと前に楽器始めてて、めちゃくちゃギターが上手やった。
学校が終わったらようその兄ちゃんのところ行って練習してたわ。
歳は離れてたけど仲良うしてくれて、頼もしい兄ちゃんやったな。
今頃何してはるんやろか…
時々思い出す。
今日も授業か終わったらすぐに部活や。
チャイムが鳴ってすぐに亮ちゃんと部室に向かう。
相変わらず分かりにくい場所にある部室。
部活は楽しいけど行くまでが長いねん。
「なぁ、いくら人数少ないから言うて、遠ない?部室」
「なぁ、もうちょいええとこ用意して欲しいやんな。」
亮ちゃんも同じ意見のようや。
こんな会話は毎度のこと。
ぶつぶつ文句言いながらも、結局ちゃんと行くんやから俺らって単純やな。
せやけど今日はいつもと少し違った。
「あんな、丸…」
部室まであと少しのところで突然亮ちゃんが立ち止まった。
振り返ると表情が深刻そうやったので、心配して亮ちゃんを見る。
「どうしたん?」
俺は亮ちゃんが腹の具合いでも悪くなったんちゃうか思って、俯きがちのその顔を覗き込んだ。
「俺な、A先輩のこと好きやねん。」
まさかの告白に俺は少しの間呼吸も忘れて、何も考えられへんかった。
立ち尽くす俺に、亮ちゃんも何か感じて、眉を下げて困った顔をする。
「あ、せやからって丸に仲介頼もうとか思ってへんから、安心してな?」
亮ちゃんはいつもの笑顔に戻っていた。
足を進めて、部室のドアを勢いよく開けて入っていく。
あかん、俺だけ置いてきぼりやん。
そろそろただの癒し担当から卒業せなな。
心が少し焦った。
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作者名:神八爽蘭 | 作成日時:2020年2月28日 18時