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結局あの後康ちゃんが起きることはなくて、起こすのも可哀想だからブランケットをかけてあげた。
片付けが終わると深澤くんは部屋に戻ってしまって、まだ開けていないお酒を返そうとしたら
｢じゃあ次にベランダで呑む時用にとっておいて？｣
と受け取ってもらえなかった。
おもてなしのはずが結局深澤くんにもお酒をご馳走になる形になってしまった。
ドアを閉める直前に今日はありがとうって改めてお礼まで言ってもらえて、私の気持ちは乱されまくりだ。
優しい深澤くんは好き。
でも優しくされると辛い。
そんな葛藤がいつも私の中で渦巻いている。
いつもいつも…深澤くんは優しいままだから。
私以外にもその優しさを向ける人がいることは分かってるのに、いざ彼を前にするとそんなこと考えられなくなる。
まるで自分は特別なんじゃないかって思えるくらい、それくらい彼は女性の扱いが上手なのだ。
何度か起きては寝てを繰り返し、やがて朝がやってきた。
頭がぼーっとしているけれどそろそろ康ちゃんを起こさなきゃ。
ふらつきながら彼の元へ向かい、優しく肩を揺すると康ちゃんは眉を顰める。
｢んあれ？俺寝ちゃった？｣
｢うん。おはよ。｣
｢うわぁまじかぁ…
ふっかさんは？｣
｢ふっかさん？｣
｢ん、皆からそう呼ばれてるんやって。
せやから俺もそう呼ぶことにした。｣
いつの間にそんな話をしたのか、康ちゃんはまるでもう随分前から知っているような友達のように深澤くんのことを話し出した。
｢A、お隣さんがええ人でよかったな。｣
｢うん。｣
｢でもこれからは俺にも頼ってや？
せっかくそばにおるんやから、な？｣
｢…うん。｣
私の頭をぽんぽんと撫でる康ちゃんの手は、深澤くんの手よりも少しだけゴツゴツしていた。
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作者名：カフ
| 作成日時：2022年10月11日 21時
