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浅瀬で真実ちゃんと楽しそうにしているふっかを1度見てから、私は気持ちを振り切るようにパーカーを脱いで海に向かった。
｢A先輩って意外とスタイルいいんですね｣
後から海にやってきた目黒くんが私の水着姿を見るなりボソッと言った。
｢意外とって何よ！｣
目黒くんを小突くと彼は柔らかい笑顔を見せた。
たった数時間でこれだけ打ち解けられたのはきっとお互いに同じ秘密を抱えるもの同士だから。
だけど目黒くんごめんね。
さっきの目黒くんの頼み聞けないや。
私もう頑張れない。
しばらく目黒くんと談笑していると、
そんな私たちを引き裂くように突然ふっかが私の手を掴み海へと歩き出した。
｢ちょっとふっか！｣
｢海入るぞ！｣
繋いでいない方の手で持っていた浮き輪を海に浮かべると私にその中に入るよう言った。
仕方なく浮き輪の中に入るとふっかが浮き輪を引っ張り奥の方へと歩みを進める。
足がつくかつかないかのところで止まると振り返って浮き輪に腕をついたふっかと目が合う。
こんな格好でこんなに近い距離で好きな人と2人きりなんて、心臓がいくつあっても足りない。
さっき、もう諦めるって決めたはずなのに、気持ちは正直でこんなことされたらやっぱりふっかのこと簡単には諦められそうにない。
｢パーカー着てた方がいいって言ったじゃん。
なんで脱ぐの？｣
ふっかが少し怒った口調だったのでわけがわからず首を傾げる。
なんで私今ふっかに怒られてるの？
｢だって海に入るには邪魔でしょ？｣
｢そうだけどさー、そしたら海出たらすぐ着なよ？｣
ふっかは拗ねた子供みたいに唇を尖らせた。
しばらくするとまた前を向いて泳ぎ出す。
海の水は冷たいのに何故か耳だけ赤くなってるふっか。
せっかく決心した気持ちが大きな波のように揺れた。
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作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2021年1月13日 20時
