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食べ終わって食堂から出る時、不意に後ろから腕を掴まれた。
他のみんなは前を歩いていてそれに気づいていない。
びっくりして振り返った。
私の腕を掴んでいるのはふっかだ。
｢どうしたの？｣
｢あのさ…花火2人で見ない？｣
｢でもみんなが…｣
｢上手く抜け出せば大丈夫だから。
それともAは俺と花火見たくない？｣
他に一緒に見たい人がいるの？
なんて聞いてくる。
ふっかはきっと私の気持ちに気づいてる。
ここで私が首を横に振らないことも分かってるから聞いてるんだ。
ふっかの誘いを受けるまで腕を離す気はないのかも。
悔しいけど、全部ふっかの思ってる通りだよ。
もう苦しいから諦めたいのに、一緒に花火を見たいのはふっかしかいなくて、好きなのはふっか。
分かってるなら意地悪しないでよ。
ダメなら簡単に諦めさせて欲しいのに。
｢あれ？ふっかさんとA先輩、何してるんですか？｣
その時後ろから声が聞こえて振り返ると目黒くんがいた。
腕はまだ掴まれたままだ。
むしろ見せつけるようにグイッと引き寄せられた。
｢ちょっと話してただけ｣
｢…俺忘れ物しちゃって取りに来たんです。｣
｢あ、そうだ。
目黒、花火大会俺ら二人で見たいから真実ちゃんのこと頼んでもいい？｣
｢…何言ってるんですか？｣
昼間、私たちに上手くいって欲しいって言ってた目黒くんのことだからこのお願いは快く引き受けてくれるだろうと思っていた。
だけど目黒くんの返答は予想もしていないものだった。
｢都合良すぎません？
昼間あんなに真実と一緒にいたのに。
さっきだって真実、ふっかさんと花火見るんだって楽しみにしてましたよ？｣
｢…それはさっ｣
｢断れなかったから、っていうのはナシですよ？
ふっかさんだって楽しんでたでしょう？｣
目黒くんの言ってることは正しい。
だけどふっかは昔から優しくて断れないタイプだっていうのも知ってる。
だからこそ人気なんだもん。
もしA先輩と花火見たいなら、ふっかさんから真実に言ってあげてください。
ちゃんと真実が諦められるように。｣
それだけ言うと目黒くんは私たちの横をすり抜け食堂に入っていった。
気まずい空気が流れる。
｢…ごめんな、なんか｣
離された腕が熱を失い、夏なのにひんやりと感じた。
｢ううん。｣
｢真実ちゃんにはちゃんと言うから｣
俺が一緒に花火見たいのはお前だけだから。
ふっかは私の頭を軽く撫でると先に行ってしまった。
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作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2021年1月13日 20時
