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｢そろそろ旅館戻ろっかー｣
冴希の一言で皆が片付けに動く。
さっきまで散らばっていたスペース大人6人が本気を出せばあっという間に片付いてしまった。
｢持つよ｣
ほとんどの飲み物が無くなり軽くなったクーラーボックスを持ち上げるとすぐさまふっかに奪われた。
何か言いたげな目でこちらを見ている。
｢あのさ…冴希から聞いたんだけど、A今日のために水着新しいの買ったってほんと？｣
｢…そうだよ｣
｢めっちゃ似合ってて可愛かった。｣
それだけ言うと照れくさそうにしょっぴーの元へ行ってしまうふっか。
ずるいよ。
さっきあんなにパーカー着てろって怒ったくせに。
私単純だからそんなこと言われたら期待しちゃうよ。
苦しいから諦めようとしてるのに、胸の高鳴りはおさまってくれない。
近くにあった空き缶の入ったビニール袋を持って一足遅れてワゴン車に乗り込んだ。
｢楽しかったけどさすがに疲れたよねー｣
｢肌ヒリヒリするー｣
皆がガヤガヤと楽しそうに話している中、私は窓の外を眺めていた。
頭の中ではさっきのふっかの言葉がリピートされ続けている。
3列目では相変わらず真実ちゃんとふっかが楽しそうに話している。
その様子をまともに見たら今の私の頭の中はぐちゃぐちゃに混乱して正気ではいられなくなるからだ。
隣の席の目黒くんはそれを察してか、何も話しかけてこない。
ふっかの言動1つで私の決心はいとも簡単にぐらついてしまう。
だから諦めるなら自分で遠ざけるしかない。
旅館について夕飯の時間までまだ余裕があったので海で疲れた体を温泉で癒そうということになった。
女子3人という状況は未だに慣れず居づらい。
だけど真実ちゃんのことどんなに気に入らなくても除け者にせず、一緒に行ってあげる冴希はやっぱりいい子で、しょっぴーが好きになるのも分かるなーって勝手に納得してると
｢Aー！
あんまり遅いとおいてくよー！｣
と前を歩いていた冴希に急かされてしまった。
｢A先輩って時々ぼーっとしてますよね｣
なんて真実ちゃんに言われちゃって、何も言えない私は笑って誤魔化した。
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作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2021年1月13日 20時
