【ヒプマイ】嘘も方便【夢野幻太郎】

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幻太郎side

？「……あれ、夢野？」

幻太郎「っ！目が覚めたんだね！

今すぐ先生を呼ぶよ…っだから！」

青年「ははっ落ち着きなよ」

幻太郎「俺にとっては笑い事じゃないんだ」

彼が体調を崩したという連絡が彼の母親からあったのが今日の昼。彼女と会う約束の時間の直前のことだった。

青年「ごめんね…大したことではないんだ」

幻太郎「…大したことなんだよ」

思ったよりも元気そうだが、顔色はあまり良くない。

青年「ちょっと風邪をひいたってだけなんだ」

幻太郎「今の君にとって風邪はどんなに危険か…

俺は君が心配なんだよ…」

もし君がいなくなってしまったら…俺は…

青年「…ありがとう夢野。」

そう弱々しく笑うから、なんだか泣きそうになった。

青年「それにしても今日はいつもとは違う服装なんだね。」

幻太郎「…あぁ、ちょっとこういう気分だったんだ

おかげでいつもよりも走りやすかった」

青年「夢野は昔から肝心な時だけ嘘が下手だな…

今日は何か大切な日だったんだろう？」

幻太郎「何でもない日さ」

青年「ごめんね…今からでも間に合うかな？」

幻太郎「そんな…謝らないでくれ…

俺は、俺の意思でここに来たんだ。」

青年「行ってくれ夢野。そしてまた来てほしい。

君の大切な人を、僕にも紹介してくれないかな」

幻太郎「…君には、本当に敵わないな。

…でも、もう俺に愛想をつかしてしまったかもしれないんだ。」

青年「そんなことはないさ。君が好きになった人なんだから。きっと、今も君のことを待っているはずだ。」

なんの根拠もないのに自信満々に言う。なのに彼がそう言うと不思議とそんな気がしてきてしまう。

幻太郎「…ありがとう。行ってくるよ。

そして、彼女を連れてまた来るよ。その時は君に自慢話をしよう。」

青年「ははっ、楽しみにしておくよ。」

彼の笑った顔を見てから病室を後にして走った。

今日はよく走る日だ。乱数へのこの服の感想は、【走りやすかった】に決定だな。

そんなくだらないことを考えながら、一心に走った。

会いたいんだ、Aに。今日のことを謝って、それで……

伝えよう、俺の気持ちを。手遅れになる前に。

電車を乗り継いでシブヤまで戻る。彼女の家につく頃にはきっともう夜だろう。

窓から月を眺める。夕方の空にうっすらと月が見え始めていた。

シブヤに戻ってきた頃には三日月がくっきりと空に浮かんでいた。

駅から一直線に彼女の家に向かった。

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