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シブヤから離れた場所にある病院を後にする。
青年「僕から一つアドバイスをあげるよ。君は昔から変なところで頑固だから。
もう少し素直になってみるといいと思うよ。
相手にも、自分にもね。」
電車に揺られながら、外の景色をぼぅっと眺める。
素直になんてなれるだろうか。存在自体を嘘で塗り固めてしまったというのに。
あぁ、いっそ帝統のように本能のまま生きることができたらよかったな。
美味しいときは美味しい、嫌なときは嫌だと言い、
好きだと思ったときには好きだと言う。
まさか無職なギャンブラーでいつでも素寒貧な男を羨む日が来ようとは。
人生わからないものだ。
そんなことを思いながら帰路をゆっくりと歩いた。
しかし、家に帰っても執筆に取りかかることもせず、書斎に閉じ籠り天井のシミを眺めていた。
ペンを持ってもどうにも集中できない。こんなことは初めてだ。
たしかに、締め切りが近づけば近づく程、全てを捨てて逃げ出したくなることもあった。
でもこれはそうじゃない。
ふとしたときに頭に浮かぶのは、彼女の…Aの嬉しそうに笑った顔。
「君にもついに春が来たんだね」
幻太郎「…俺に春なんて来るものか」
どこかで思っていた。自分は幸せになんてなるべきではないと。
俺なんかよりもずっと幸せになるべきの彼を差し置いて。
彼がそんなことを望んでいるわけがないのにね。これは単なる僕のエゴだ。
「僕は君に幸せになって欲しいんだ」
その言葉は小生の心を動かすには充分だった。
俺なんかが彼女を好きになってもいいだろうか。
多くは望まないからせめて好きでいるだけなら許されるだろうか。
あぁ、今とても彼女に会いたい。
いつの間にか外は暗くなっており、時計を見れば22時を過ぎていた。
考え出すと時間を忘れてしまうのは悪い癖だ。
起き上がると体中からバキバキっと音がなる。それと同時に空腹を知らせる音も。
幻太郎「どうしようもなく健康体だな…」
今から晩御飯なんて作る気にもなれず、とりあえずコンビニで軽く何かを買おうと思い外に出る。
今日は月が綺麗だ。
家から一番近いコンビニで適当にパンを買った、その帰り道。
もう見慣れた後ろ姿。
こっそり近づけば「会いたい」なんて声が聞こえてぎょっとする。
彼女にも俺と同じように会いたい人がいるのだな。
幻太郎「誰に会いたいんです?」
彼女の驚いた顔が見たくて今日もまた声をかけた。
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はりそん(プロフ) - オタクさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです!こちらこそありがとうございます!!! (6月19日 8時) (レス) id: bafcf47fba (このIDを非表示/違反報告)
オタク - すごくいいお話だったので一気読みしてしまいました!こんなに素敵な作品を作ってくださって本当にありがとうございます!! (6月19日 1時) (レス) id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
はりそん(プロフ) - マイケル磯田さん» コメントありがとうございます!最高なんて言って頂けて私も最高です!すごく嬉しいです!ありがとうございます! (2022年4月22日 0時) (レス) id: bafcf47fba (このIDを非表示/違反報告)
マイケル磯田 - ふと、推しの夢小説って読んだことないな…と思い主様の作品を拝見させていただきました!あの…最高でした(語彙力)世界で1番幻太郎のことが大好きで、物語の中の彼が可愛すぎて、悶絶しながら読ませていただきました(笑)幻太郎の新たな一面も見れて楽しかったです! (2022年4月12日 7時) (レス) id: a8e885080b (このIDを非表示/違反報告)
はりそん(プロフ) - 花奏さん» コメントありがとうございます!ひぇ、、、そう言って頂けてこちらも胸いっぱいです……!ありがとうございます!!!! (2021年11月17日 2時) (レス) id: bafcf47fba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はりそん | 作成日時:2018年9月6日 2時