. i ！！！ . ページ19
.
「A！！」
「うわっ！吃驚した」
牛島が私の名を呼び、後ろから私の腕を引いた。そのまま牛島の正面を向かせれた私は足を止めざるを得ない。
「大丈夫、か？」
「え？うん。……え、何が？」
私より、今の貴方のほうがよっぽど大丈夫ではなさそうだよ？ほら、今にも泣きだしちゃいそうで。焦燥感に苛まれてて。寂寥感が溢れてて。
そんな牛島に、私はケロッとした調子で答えた。傍から見れば、今の私達は随分カオスなのであろう。当事者である私もそう思う。
ふっと私の両肩に微かな重みが加わった。牛島が手を置いたのである。そして、そのまま牛島のもとに軽く引き寄せられる。その手つきは、まるで朽ちかけの宝物を扱うようで。ヒビの入った氷細工に触れているようで。消えかけの薄光に手を伸ばしているみたいで。
とにかく、吐き気を覚えるくらい優しかった。
「名前、何度も呼んだんだが……」
牛島が膝を曲げて私の顔をのぞき込んでくる。眉間には若干シワがより、何だか息苦しさすら感じた。
「あ、それはごめん。……ちょっとぼーっとしてた」
そんな牛島が見るに耐えかねなくて、私は慌ててすぐに返答をした。
私の言葉が酸素となって、牛島の肺を満たしていく。コポコポ音をたてながら、満たしていく。けれど。今の牛島には全然、足りなくて。全く持って、薄すぎて。
「A、頼むお願いだ。……何処にも、何処にも行かないでくれ。俺の側に、居てくれ。……頼む、お願いだ」
その様子は嘲笑っちゃうほど滑稽で、憐れで、無様で、いたわしくて、儚げで。
私は自然と涙が溢れた。
今は、今だけは、牛島の言動に不思議といつもの恐怖心は抱かなかった。
「A……？」
牛島が私の顔を覗き見る。その後ろで休憩中の部員たちのギョッとした顔が見えた。また彼らの目にはカオスに見えているだろう。真顔で涙を流す私の方が、顔色の悪い牛島に心配されているのだから。
「……ごめん、牛島」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 373人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ライチ(プロフ) - 続きは無いんですか？？まだ続きを見たいです！ (2020年10月3日 15時) (
レス) id: 812b1ab43b (このIDを非表示/違反報告)
バッキバッキーに折ーれ - あれ？終わってしまったんですか？牛若のヤンデレっぷりをまだ見ていたいです！ (2019年8月1日 14時) (レス) id: 9db58cab5f (このIDを非表示/違反報告)
たなぱし(プロフ) - 森はる。さん» 森はる。さん、コメントありがとうございます！皆さんのおかげで続編を出せました。感謝です!!!!!楽しんで頂けているようで私も幸せです（真顔）応援ありがとうございます！相変わらずな更新頻度だとは思いますが、精一杯頑張りますね（^^）!!!!! (2017年9月16日 8時) (レス) id: 47f42923ee (このIDを非表示/違反報告)
森はる。(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!!毎度毎度牛若のヤンデレっぷりを楽しみにしてるのでもう見てて幸せです(真顔)これからも無理なく更新頑張ってください！ (2017年9月16日 8時) (レス) id: 85d03e2f20 (このIDを非表示/違反報告)
森はる。(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!!毎度毎度牛若のヤンデレっぷりを楽しみにしてるのでもう見てて幸せです(真顔)これからも無理なく更新頑張ってください！ (2017年9月16日 8時) (レス) id: 85d03e2f20 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たなぱし | 作成日時：2017年9月16日 7時
