【syp】後輩失格 (ページ6)

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「返事、待ってますから」

返事って、何の返事のことだろう。
彼の言うことはいつも具体的な主語がないから、本当に言いたいことが伝わらない。
今だってそう、返事って･･･

「･･･えっと、何の返事？」

「覚えてないんすか」

ごめん、と軽く謝ると、先輩らしいですと鼻で笑われる。後輩に弄られるのは勘弁。

彼の返事を待つが、張本人は俯くばかりで表情さえも見えない。

「･･････告白、したじゃないっすか。雨の日に」

茶髪から覗いた白い耳が、段々と赤らみを増す。
手の肉にくい込む片方の手の爪を見て、彼の緊張を漸く悟った。同時に、頭の中であの日の雨が降った。

先輩のこと、好きになりました。

･･･

･･･だから＿＿＿＿＿

「付き合って下さい」

記憶より鮮明な、少し震えた声に思わず顔を上げる。
目の前の後輩は、ほんのり赤らめた頬で、私と視線が交わると気まずそうにアメジスト色を逸らした。

「･･･えっと」

＿＿＿ごめんなさい。

喉に出かけていた言葉は、液体と一緒に身体の中へ沈んでいく。

多分私は、この時金魚になっていたんだ。
だからきっと、告白を断れなかっただけなんだ。

きっとそう。

･･･決して、彼の清澄な紫が儚げに揺れるのを、見たくなかったわけじゃない。