約束した松と鈴の段 (ページ1)

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桜が舞い散る日
長屋から出てきたのは、私服の格好、背が高く、髪を縛れる長さ、丸眼鏡の青年、猪名寺乱太郎(いなでららんたろう)

「もう…卒業か…」

後ろを向き、長屋の中を見た。甘い匂い、小銭の音、ワイワイした声を感じた。

「この長屋とは、さよならだね」

長屋でニコッと笑い、長屋に向かい頭を下げた

「六年間…ありがとうございました！」

大きな声で礼を言った。すると、右から二人の声が聞こえた。

「乱太郎!!」

摂津のきり丸(せっつ)と福富しんべヱ(ふくとみ)。二人は手を振り、乱太郎を呼んだ

「きり丸！しんベヱ！」

乱太郎も手を振った

「何してるんだ？皆、正門で待ってるぞ！」

「早く！早く！」

ソワソワしているしんベヱを見た、乱太郎は二人に向った。
正門の前には黒木庄左ヱ門(くろきしょうざえもん)、二郭伊助(にのくるわいすけ)、笹山兵太夫(ささやまへいだゆう)、夢前三治郎(ゆめさきさんじろう)、皆本金吾(みなもときんご)、山村喜三太(やまむらきさんた)、加藤団蔵(かとうだんぞう)、佐武虎若(さたけとらわか)。教科担当、土井半助(どいはんすけ)と実技担当、山田伝蔵(やまだでんぞう)が待っていた

「遅いじゃないか」

礼儀正しい、庄左ヱ門は三人に聞いた

「ごめん、長屋を眺めてた」

笑いながら謝った乱太郎、その姿を見た三治郎と兵太夫は笑った

「僕達も長屋を眺めてた」

三治郎は少し照れて、顔を逸らした

「カラクリを色々仕込んだから、長屋を元に戻した」

兵太夫が頭を抱え、大笑いし、笑いにつられた。

「さぁ！お前達は忍になるんだぞ！」

伝蔵が言うと乱太郎達はビシッとなり、真剣な顔で聞いた。その姿を見た土井と伝蔵は目に涙が浮かんだが、堪えると土井は前に出た

「それじゃぁ、一年…いや！六年は組！最後の出席を摂る！」

「はい！」

学園に響くほどの声…1人ずつ名前を呼び、元気な返事…そして、全員が終わった

「本日の卒業式はこれまで！」

「ありがとうございました!!」

頭を下げ、涙を隠し、堪え、11人は忍術学園を飛び出した。土井と伝蔵は笑いながら手を振った…門が閉まり、土井は下を向いた

「土井先生…アイツらを教えたのは我々だ。生徒を信じない先生が何処にいる？」

小さな優しい言葉を言った伝蔵、土井は涙を拭き、顔を上げた

「…そうですね」

笑顔にし、二人は職員室へ向かった。