・ ページ23
｢先生から、聞いたわよ。なんであんなこと言うの？｣
目覚めて早々、母さんからの説教。
今更母親面されても。って感じ。
それに、正直、僕なんかはさっさと死んで、潤に元気になって欲しいって思ってるんでしょ。
なのに、そうやって、いい人ぶるなよ。
そんな僕の気持ちも、言葉にならない。
神様がそうしてるのかな。
あの酸素マスクとは違った少しゴツめのやつが僕の口の周りを囲ってて、上手く喋れない。
｢和也くん…キミの心臓は、潤くんにはあげられない。。。ガンが転移してるんだ。｣
マスクの中でモゴモゴとしていると、先生がやってくる。
話の展開が早すぎる。
なぜ、こんなにあっさりと言ってしまうのだろうか。
まぁこちとらそっちの方が助かるけど。
｢他にも脳や肺、喉にも転移が見られました。これからの方針はまた明日決めるから、今日はゆっくり休んでね。｣
明日があるということを遠回しに言い、笑顔で去っていった先生。
明日なんていらない。
こんなに、死にたいと思ってるやつになんかいらない。
修学旅行にもいけない、明日が楽しみでしかない潤に余命を分けてあげられたらどんなに良いだろうか。
それに、こんな末期のやつに金なんか使ってらんない。
僕の心臓が使えないとなったら、何千万払わないといけなくなっちゃう。
そう考えたら、もっとはやく死ぬべき。
｢和、そんな難しい顔して、何考えてるの？｣
負の感情が僕を支配し、周りが見えていなかった。
母さんが冷えピタを張り替えながらそう聞く。
口答えも出来ない僕はされるがまま。
それでいいんだ。口答えできなくて。いいんだ。
｢っ、、げほっ、、はあっ、、、ひゅ、、、｣
｢かずっ、、、、！｣
ずっと傍で看病してくれてた母さんが叫ぶ。
咳と共に出た血。
酸素マスクの中に閉じ込められ、再び口に戻ってくる。
あ、死ぬんだな。
このまま、息を引き取るまでは、最後だけは傍にいて欲しい。
自分だけの母さんでいて欲しい。
潤のことなんか頭の片隅にも置けないくらい、僕の事でいっぱいになって欲しい。
｢ありが、、とう。｣
文句や謝罪、沢山伝えたいことがあったけど、もう限界みたい。
それで最後に出た言葉がこれだった。
少しはいい息子に見えたかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 159人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
賞味期限(プロフ) - ちえさんさん» ありがとうございます！兄弟設定のお話大好き人間なんで、はじまりの年は結構お気に入りなんです！続編的なもの書いてみようと思います！ (2023年2月5日 7時) (
レス) @page34 id: e5602ed7e0 (このIDを非表示/違反報告)
ちえさん(プロフ) - はじまりの年、とても素敵なお話でした。この設定で長いお話も読んでみたいなぁ、なんて思ってコメントしました。作品、いつも楽しく拝見しています。 (2022年12月22日 8時) (レス) id: 94c3edab09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：賞味期限 | 作成日時：2022年11月5日 1時
