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「後10秒動くな。少しの動きもダメ。ジッとしてろ」
頭の中で10秒数える。
「…よし。もういい」
カゼが來夢の口から手をはずした。
「なんだったんですか?」
「俺を狙う奴」
「?」
カゼはそれ以上話さず、歩き始める。
來夢も足を進める。
「あ…」
扉だ。
大きくて頑丈そうな扉。
「ここだ。この扉の向こうが表の世界。帰れ」
俺が住んでた所…。
「嫌だ」
いつの間にか、口から言葉が出ていた。
「嫌だじゃない。帰れ」
來夢はカゼを見上げる。
「帰る所がない」
カゼの顔色は変わらない。
「お前の帰る所は表の世界だ」
「そういう意味じゃなくて!」
來夢の言葉をカゼは遮った。
「來夢はここじゃ生きていけない」
カゼは扉をギッと開く。
「帰るんだ」
來夢は扉の向こう側に見えている景色に目を移した。
確かに…俺の知ってる街並みだ。
「…分かった」
扉をくぐる。
カゼを振り返った。
「ありがとうございました…助けてくれて」
カゼは無言で扉をバタンッと閉めた。
來夢は胸の辺りがモヤモヤした感じがして気持ち悪かった。
「帰ろう…」
商店街の中を來夢は歩いていった。
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作者名:みあゆい | 作成日時:2019年12月6日 17時