32 ページ33
どこだ…ここは。
裏の世界の夜よりも真っ暗な所だ。
自分の姿さえ見えない。
「カゼ」
カゼはバッと振り返った。
大切な奴の声だったから。
振り返った先には來夢がいた。
屈託のない笑みを浮かべている。
自分の姿も見えない中で來夢の姿は周りに光をまとっているかのように、ハッキリと見えた。
來夢にはカゼの姿が見えているのか、カゼの方にまっすぐと迷いない足取りで近づいてくる。
「來夢…」
カゼも足を動かそうと体をほんの少し動かす。
ズキッ
「が…ッ」
だが、左の肩が痛み動きを止めた。
そうだ。
俺は倒れたんだ。
銃弾があたって…。
じゃあ、ここは…?
來夢はカゼの目の前に立ち、カゼを見上げる。
両肩をガシッと掴まれた。
「っ!」
痛みに顔を歪める。
そんなカゼを見ながら來夢はニコニコと笑っている。
「來夢、痛い。手をどけろ」
カゼは來夢の手を払おうとした。
「…は?」
払えない。
どんなに力をいれようがピクリとも動かない。
來夢にはこんな力はなかったはずだ。
おかしい…。
來夢を睨む。
「來夢、手をどけろ」
もう一度言う。
動かない。
カゼは確信した。
コイツは俺の知ってる來夢じゃない。
「お前…誰だ」
「來夢だよ」
カゼは常に持ち歩いている銃を手に持つ。
「アハハ。來夢だよ。俺、來夢だよ」
目をギョロギョロと動かしながら言う來夢。
銃を持つ手に力をいれる。
「カゼっ!!!」
ハッとなった。
後ろから声が聞こえた。
カゼは固まる。
また、來夢の声だ。
でも、今目の前にも來夢に似たなにかがいる。
後ろにいる奴も同じじゃないか。
そう思って振り向かなかった。
「カゼ…早く起きて」
泣きそうな声。
知らない。
どうせ、後ろにいる奴も偽者なんだ。
來夢は一人しかいない。
偽者ごときが…死ね。
カゼは目の前にいる奴に銃を構えた。
「俺、俺はねー來夢ですよ。來夢だね。アハハー」
心臓を狙う。
引き金を引いた。
「げひゃひゃひゃっ、グエッ」
口から血を吐き出しバタッと倒れる。
カゼはすぐに後ろをチラッとみた。
「カゼ…」
見た目と声はカゼの知ってる來夢だ。
「もう大丈夫だよ…。肩の治療はしたから。カゼ、まだ死んでない。早く、一緒に話そうよ?」
「……」
警戒が少し薄れる。
「ね…?カゼ」
來夢が手を差し出す。
この來夢は本物?
さっきの奴とは全然違う。
…迎えに来てくれたのか。
カゼは來夢の手を掴んだ。
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みあゆい | 作成日時:2019年12月6日 17時