07 ページ7
.
「あーもう、上手くかけない」
絵を長いこと書いている分、特徴は掴めてるしおかしなところもない。
けど、納得がいかない。
いつの間にかスケッチブックは彼で埋め尽くされてしまっていた。
絵を見る彼、バレーをする彼。
その二つしか彼の姿を見たことがない。
大抵無表情だから、別にほかのことをしてても同じような感じなんだろうな。
想像がついて面白い。
でも、想像じゃなくて実際に見てみたいな。
「せめて、写真があればなあ」
そんな独り言に例の彼女が反応をする。
「それじゃあ模写っぽいじゃん」
横からひょっこりと由利が顔を覗かせてくる。
「リアルの人を描くとなると大抵模写だよ」
リアルの人は画面の中にいるキャラとは違う。
画面の中の人は元々イラストだし絵にしてもなんの問題もない。
けど、生身の人間はそもそもイラストじゃない。
だから見ないと描きづらい。
……なんて思ってるのは私だけかもしれないけども。
「ふーん、とりあえず、彼を描くのにAは彼の写真が欲しいんだね?」
真っ直ぐな瞳。
言葉と合わせると、「私なら簡単に撮れるよ」と訴えてるようで少し怖い。
いや、彼女なら簡単に出来る。
彼女の行動力は化け物だ。
それに私と正反対の性格、考えを持つ彼女だ。
私にできないことは大抵出来る。
私は彼を堂々と撮ることも盗撮することもできないけど、きっと彼女なら出来る。
私の考えが当たったのか「じゃあ一応」と言って彼女はスマホをいじり始める。
ピロンと通知音が鳴り、見るとやはり彼女からの通知。
彼女とのトークを開けばそこには彼の写真が送られていた。
「参考までにして」
時計を見て彼女は自分の席に戻っていく。
誰も撮られていることに気づいていない一枚。
去年のものだろうそれは、彼が由利に見せる自然な表情、姿が写っている。
真顔に近い表情。
それはいつも私が見る彼の表情となんとなく違う気がした。
.
158人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京ちゃん。(プロフ) - 無理やり完結した感じになってしまい申し訳ありません (2020年2月22日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - 更新遅くなりすみませんでした (2019年8月20日 21時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - ぴのさん» ありがとうございます!訂正しました (2018年12月5日 12時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 天童さんの一人称は確か僕じゃなくて俺ですよー (2018年12月4日 22時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
ふじもん(プロフ) - 京ちゃん。さん» いえいえ!むしろ上から目線申し訳ないです(-_-;) (2018年9月29日 23時) (レス) id: 9aa2f2467a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ