episode155 ページ35
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｢はあ……｣
櫻井が寝室に行ってから、松本は何度目か分からないため息をついた。
せっかくのお泊まりなのに、自分が台無しにしてしまった。
(先生は、俺のために言ってくれたのに…)
勉強なんてする気にもなれず、松本は机につっ伏す。
こんな雰囲気になったのは初めてだ。
喧嘩とも言えない、自分が一方的に当たってしまっただけ。
受験のイライラを櫻井にぶつけてしまった。
(ただの八つ当たりだ……)
自己嫌悪に陥って、しばらく。
どれくらいそうしてただろうか。
気がつけばもう11時になっている。
このままじゃ埒があかないと思い、松本は問題集を閉じて寝室へと向かった。
｢……せんせ？｣
ドアを半分あけて顔を覗かせてみれば、明るい部屋の中ベットの上で寝ている櫻井がいた。
｢せんせ………｣
小さく聞こえる規則正しい寝息。
櫻井の寝顔を見るのは何回目になるだろうか。
何度見ても、こんな心境でも、とても愛らしく思う。
｢ごめんね…｣
頬に手を添えてみれば、櫻井はピクッと反応した。
眠りが浅かったのか、ぱっちりと目を覚ましてしまった櫻井。
｢…ん、まつもと…｣
寝起きの櫻井を見るのは2回目。
1回目は起きたとたん、驚いたように松本から離れたことを思い出した。
それが今は、頬に添えた松本の手を無意識なのかきゅっと握っている。
｢起こしてごめん…｣
握られた手を握り返して言えば、櫻井はふっと笑う。
｢そんなことで謝るなよ｣
｢あ、これだけじゃなくて…。さっきもごめんなさい｣
櫻井が横になっているベットに腰をおろして、松本は申し訳なさそうに眉を下げた。
｢俺のために言ってくれたのに…｣
｢言うと思った｣
｢え……？｣
松本の手を握ったまま櫻井は体を起こした。
少しだけ松本に寄り添って、櫻井は言葉を続ける。
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2015年8月18日 22時
