それは舞い散る桜のように[M×S] (ページ16)

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episode16 ページ16

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「翔くんは大変そうだよな」

「まあ、それなりにね。あなたは暇そうだけど」

「おー、暇だぞ。でもいつもあいつが来るからなー。そう暇でもないかもな」

あいつ。

大野が言うあいつが誰なのか、櫻井には分かっていた。

「松本潤、でしょ？」

「おう。松潤な」

「松潤っつーの。あいつマジで毎日来るの？」

「おう、本当に毎日来る」

「なにやってんだよー。てか、あんたも何やってんだよ！普通、生徒が仮病で来たら返して授業に出させるだろ！」

櫻井に最もなことを言われても大野はへらっと笑うだけ。

結局櫻井が何を言っても無駄なことは分かっているけど。

「松潤来なくなったら俺、ずっと暇になっちゃうじゃねーか」

「だからって......」

反論しようとする櫻井をまあまあとなだめて大野は二杯目のコーヒーを手渡した。

櫻井はそれを受け取って一口、口つける。

きっちりしていて完璧主義の櫻井とぼんやりしていて適当な大野。

そんな2人がなぜ大学時代から仲が良いのか、周りの人間は不思議に思っていた。

(仲が良いことに理由なんてあんのかな.....)

櫻井はボーッと外を眺めながらそう思う。

自分は昔から色んな人間に言い寄られる。

口説かれるとか、そういうこと以外でも。

よく分からないけれど、自分には人を惹きつける何かがあるのだろう、と櫻井は学生の頃から薄々気づいていた。

それがゆえに、嫌な思いもたくさんしてきた櫻井。

見た目だけで判断して声をかけてくる人が多く、そういった人間にはある程度の距離を保っていた。

そんなときにふと気づけば、となりに大野がいたんだ。

大野はひとつ学年が上だったけれど、学部が同じで選択している授業も同じで。

大野は特に何を話すわけでもなく、ただそばにいた。

たまにぼそっとしゃべることばが面白くて。

櫻井は大野といるのが楽で、自然と一緒に行動するようになっていった。

まさか職場まで一緒になる日が来るとは思わなかったけど。