ハッピーエンドにさよならを02 ページ6
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｢おらっ！｣
1発、拳がお腹にぶつけられたのをきっかけに、他のやつらもひとりの男をよってたかって殴り始める。
学校にバレないように、顔は決して殴らない。
体だけを集中的に殴られて、絶対に痛いはずなのに。
殴られている男はなんの抵抗もせず、声もあげず、ただただ暴力を受け入れていた。
(…なんだあいつは…)
今まで色んな人が殴られているのを見てきたけど、こんな反応のやつは見たことがない。
なぜ泣き喚かないんだ。
なぜ助けを求めない。
｢こいつ全然反応ねえな｣
｢つまんねー。やめようぜ｣
反応がない男に、4人とも手応えがなくて飽きたらしい。
4人が求めてるのは、許しを乞う姿を見て優越感に浸ることだから、無反応なやつを殴ったって楽しくないのだろう。
地面にぐったり倒れた男を放置して、4人は入口に向かってく。
｢松本、行こうぜ｣
｢あー。先行ってて｣
俺の返事になんの疑問を持たずすんなり受け入れて倉庫から出て行った4人。
俺はソファから立ち上がって、男のもとへ行く。
男はぐったりと倒れながらも、俺を見上げていた。
見覚えのない、地味な顔をしている。
見た目はガリ勉ぽくて、すぐに逃げ出しそうな感じなのに。
｢………あんた、なんで抵抗しないの？｣
｢…抵抗する相手がお望み？｣
相手の返答が意外だった。
不良かぶれの俺に、ビビる様子もなく、はっきりとした口調。
さっきまでボコボコに殴られていたとは思えない言い草だ。
｢普通、抵抗するだろ｣
｢…別に、慣れてるから｣
｢慣れてる？｣
｢…いっそ殺してくれたらよかったのに…｣
ぼそっとそう言った目の前の男。
小さい声だったけど、俺の耳にはしっかりと聞こえた。
その言葉は強がりでもなんでもなくて、本気でそう思っている言葉だった。
｢…いてぇ……｣
お腹を痛そうにしながら立ち上がった。
背中や足元についた土を払いながら、かばんを拾ってそのまま帰ろうとする。
｢おい、待てよ…｣
｢なに？｣
｢…いや、別に｣
呼び止めておいて、俺も何が聞きたいのか分からなかった。
男は俺を冷めた目で一瞥すると、腹を抑えながら倉庫から出ていってしまった。
なんだったんだ、あいつは。
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血濡れ蛍 - ぽっぷ様、お久しぶりです。ぽっぷ様の作品の、ストーリー性や、表現の仕方に感動しながら読みました。特に、『ハッピーエンドにさようならを』を読んで、思わず涙が出てしまいました。今後も期待しています♪ (2021年4月2日 13時) (
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2021年1月11日 0時
