ハッピーエンドにさよならを08 ページ12
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櫻井を抱えて、雨が降る中自分の家に連れてきた。
濡れた服を替えて、冷えた体を温めて、ベッドに寝かせる。
今日は顔にも傷があった。
あいつらにやられたんだろう。
かわいそうだと、殴られた相手に思うのは初めてだった。
なんで俺は櫻井相手にこんな風に思っているのか分からない。
いじめっ子が、いじめてるやつの心配か...。
櫻井に言われた通り、笑える。
｢なにやってんだろ…｣
自分で何がしたいか分からなくて、考えるのをやめた。
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──────
潤はやさしいね……
あの人みたいにはならないで──────
誰だ、この声。
聞き覚えのある、なつかしい声。
俺が優しい？何言ってんだ？
こんな俺が、優しいわけじゃない。
あの人って誰だよ。
誰の声なんだよ……。
｢……………｣
静かに眠りから覚めて、頭の中から聞こえていた声は消えていく。
ああ、あの声はあの人だ。
俺の母親だ。
目が覚めた途端に色んなことが蘇ってくる。
あの人みたいにはならないで、とくりかえす声。
それが母親の口癖だった。
俺が7歳のときに俺と母親を置いて出ていって、それから母親はずっとそんなことを言っていたっけ。
そんな母親も2年後に俺を置いて死んでしまったのだけど。
10年以上前のことだから、母親の声すらも忘れていた。
「起きた？」
頭上から声が聞こえてきて顔を上げれば、俺のベッドに上半身を起こして座っている櫻井がいた。
ああ、そうか。俺が連れてきたんだった。
どうやら俺はベッドサイドに頭を伏せて眠ってしまったようだ。
「...おまえ大丈夫かよ、体」
「言っただろ、慣れてるって」
「でも、今日のは...」
殴る蹴るじゃなくて、さっきのはれいぷされかけていた。
もしかしたらもう何人かにはされた後だったのかもしれない。
男相手に、あいつらもどうかしている。
「大丈夫だよ。別にケツは痛くないし」
「...そう、それならいいけど」
それを聞いて安心した。
ほっと一息ついている俺を見て、櫻井は不思議そうにしている。
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血濡れ蛍 - ぽっぷ様、お久しぶりです。ぽっぷ様の作品の、ストーリー性や、表現の仕方に感動しながら読みました。特に、『ハッピーエンドにさようならを』を読んで、思わず涙が出てしまいました。今後も期待しています♪ (2021年4月2日 13時) (
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2021年1月11日 0時
