episode235 ページ35
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｢翔くん、俺と付き合おうよ｣
｢え、と......？｣
｢どこに？なんて聞かないでよ？｣
恋愛は疲れたと思ってるそばから、風斗は交際を申し込んできた。
軽い口調に聞こえるけど、そうじゃない。
真剣に言ってくれていることが伝わった。
なんでって、見たら分かるもん。
風斗が真面目じゃなかったことなんて一度もない。
｢...松本のことが好きだから｣
｢それでもいいよ。松本さんを忘れるのに俺を使ってよ｣
｢そんなこと...｣
できるはずがない。
そんな最低なこと。
もう自分のせいで誰かを傷つけるのは嫌だ。
今、風斗と付き合ったとしても松本より好きになることなんてない。
しばらくは松本が消えない。
そんな状態のまま風斗と付き合うとか。
風斗がよくても、俺はよくない。
｢じゃあ一緒にいよう。毎日 学校くるから｣
｢......｣
｢大丈夫。俺を信じて｣
風斗はまるで、俺の答えを知っていたかのようにすらすらと言葉を連ねる。
俺に考える余地を与えない。
断る理由を考える時間をくれない。
風斗みたいにすらすら言葉が出てこない俺は、言われるがままに頷いて。
また流された。
話が終わったらすぐにいなくなるのが風斗という男だ。
今もまた、ばいばいと手を振っていなくなってしまった。
そっか...俺がいつもこんなだからダメなんだ。
はっきりと断れないから、松本のことも傷つけてしまったんだ。
余計なことを思い出して、胸が締めつけられる。
もう関わることもないのだから、傷つけることもない。
そう思うと、いささか気持ちが楽になった。
遠くから見つめるだけの存在。
それが俺らにとって1番いい距離だったのかもね。
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2017年6月4日 20時
