episode216 ページ16
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｢昨日は何してたの？｣
松本に連れ出されて誰もいない中庭。
朝の光に照らされて、みずみずしい花たちに囲まれながら気分は重い。
松本はいやに落ち着いた声でそわそわする。
昨日は不自然に電話を切ってしまった。
家に帰ってもスマホを見なかったから、折り返しの電話なんて気づかなかったし...。
すごく申し訳ない気持ちでいっぱい。
｢昨日は...ごめんなさい...。あんな感じで電話切って｣
｢そんなこと聞いてないよ。何してたの？｣
｢え、と...その...｣
松本はいたって普通のトーンだ。
だけどいつもとちがうことには気づいていた。
ちょっと怖くなるときの松本。
昨日の風斗のときとはちがった怖さ。
不機嫌さを出さないようにしているんだ。
好きな人を不機嫌にさせるのは落ち込む。
｢風斗と一緒にいた？｣
｢あ...うん...｣
｢......ふーん｣
気まずすぎる沈黙。
花たちの呼吸が聞こえるんじゃないかってくらい周りも静かだった。
松本の不機嫌さが伝わってくる。
こういう空気は苦手だ。
教室で先生に誰かが怒られたときみたいな。
何か音を立てるのを遠慮する空気感。
少しでも足を動かしたら砂利道が鳴りそうで動くことも出来ない。
松本の足を見つめる。
ずっとうつむいてばっかのあの頃と同じ景色だ。
｢...なんで隠そうとするの？風斗と何かあるの？｣
｢ち、がうよ...何も...｣
｢昨日少し声が聞こえた…何言ってるかわからなかったけど...櫻井の耳元で何か囁いた音量だった｣
｢.........｣
｢どうして黙るの...｣
松本がきつく手を握っているのが見えた。
顔を上げて表情を見る。
松本も少しうつむき気味だ。
眉間にぎゅっとシワがよっている。
そんな顔をしないで...。
そんな苦しそうな、悲しそうな顔。
｢...ごめん、松本...｣
｢ごめん...って？｣
｢全部話す...｣
やっぱり隠し事はよくない。
隠そうという気が、相手を不安にさせる。
松本にそんな思いをしてほしくなくて、全部話した。
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2017年6月4日 20時
