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蒼飛「俺は、母さんの期待に応えるために生きるんだなって、幼いながらに思ったよ。
ねぇちゃんは、好きでギターやってると思うけど、
俺は違う。
でも、だからといって、他にやりたいこともない。というか、わからない。
小さい頃からバレーしかやらせてくれなかったから。」
『…』
蒼飛「誰のせいかわかる?
ぜーーーーんぶねぇちゃんのせいだよ。
ねぇちゃんがいっつも自分勝手だから、だからその分、俺が母さんの期待背負ってんだよ。
いい加減気づけよっ!!」
『…。』
蒼飛「母さんが、毎日どんな思いでねぇちゃんのギター聴いてたか。
母さんが、父さんの死でどれだけショック受けてるか。
ねぇちゃんが一つわがまま言うことで、周りにどれっだけの迷惑がかかってんのか、考えたほうがいいよ。
ねぇちゃんももう、子供じゃねーんだから。」
バタン
『……』
わたしはなにも言えなかった。
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それから数日後
オーディションの日
履歴書をカバンにしっかり入れて
お父さんのギターを背負って
なにも言わずに、家を出た。
あれから、お母さんと蒼飛とは一切口を聞いていない。
顔も見れない。
だから家事は全て、自分でこなした。
意外と一人で暮らせるもんだってわかったし、
芸能人なら独り立ちしなきゃだから
バイトで貯めたお金で買える物件を
いくつかこっそり見に行った。
そんなこんなで生活は安定してたけど
唯一安定しなかったのが、"歌"だった。
自分でもよくわからないけど、
思うように声が出なければ、いい音も鳴らない。
そんな日々が続いた。
だから正直、今日のオーディションは不安でしかない。
でも、
お父さんのような人に少しでも近づきたいから
お父さんの娘として恥のない生き方をしたいから
だからわたしは
何があっても歌うって決めた。
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作者名:ビッキー | 作成日時:2019年3月21日 22時