わたしの歌ときみの声２ (ページ11)

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そんな状態で挑んだオーディション。

わたしが選んだ曲は、スピッツのチェリー。

理由は、
お父さんが一番最初に教えてくれた曲だから。

お父さんとの思い出の曲で

お父さんのギターで

お父さんからもらったピックで

わたしは歌った。

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コンコン

蒼飛「これ、ポスト入ってた」

『…ありがとう』

蒼飛が持ってきてくれたのは

オーディションの結果の封筒だった。

急いで中を見ようと、封筒を開けた。

結果は…

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不合格だった。

本当はね、わかってた。

不合格、って。

だって、わたしの歌、ひどかったもん。

［母さんが、毎日どんな思いでねぇちゃんのギター聴いてたか。

母さんが、父さんの死でどれだけショック受けてるか。

ねぇちゃんが一つわがまま言うことで、周りにどれっだけの迷惑がかかってんのか、考えたほうがいいよ。］

蒼飛から言われたあの言葉がずっと残ってて

オーディション中ずっっと考えてた。

わたしの歌って、何なんだろうって。

わたしが音楽をやると

誰かが犠牲になる。

そこまでして、わたしが音楽をやる意味ってあるのかな。

音楽って、誰のためにあるんだろう。

何のためにやるんだろう。

たくさんの人を幸せにできるのが音楽なのに、

わたしが歌うことで

誰かが不幸になるんじゃないか。

誰かを苦しめるんじゃないかって思った。

だって、わたしの歌は、誰かを救う？

ううん。

むしろその逆。

蒼飛を、お母さんを

苦しめてきた。

もしかしたら、お父さんだって…。

そう思ったら、怖くなった。

わたしは、もう歌ってはいけない。

わたしの歌は、誰かを傷つける。

だからもう

声を出すのをやめようって思った。

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