溶かす言葉 ページ15
．
ずっと…？？
すばるくんは、ずっとそう思っててくれてたの…？
『・・・・・っ』
渋「…え、Aさん？」
…いや、勘違いするな！わたし！
すばるくんが気を遣ってくれただけだよ。
すばるくん、優しいから。
『・・・・っ』
渋「え、ちょ、待ってや」
きっと、わたしが"曲作りの天才"って言われてるから
どんな声で歌うのかが気になってるだけだよ。
…そうだ、きっとそうだよ。
『・・・・っ、』
渋「……Aさん、」
…でも、
わたしは知っちゃったんだ。
ｷﾞｭｯ
すばるくんは
気を遣ったり、自分の興味のために
嘘を言う人じゃない、って。
渋「俺は、Aさんといつか一緒に歌えたらええなって、曲作りのたびに思ってた。
一緒に作った曲を、一緒に歌いたいって。
あんたの声は、あってええんや。
だから、泣かんといて？」
わたしの声は、あっていい……？
渋「もう、自分のこと責めるのはやめな。
自由にしたって？
それで、お父さんの死をちゃんと受け止めなあかん。
逃げてたらあかんよ、Aさん。」
すばるくんの言葉が、すっと入ってきた。
わたしは逃げてた…？
________お父さんの死から？
渋「Aさんは、1人でも歌ってええんやで。
お父さんがいなくても、Aさんを求めてる人は、たくさんおる。
俺がその、第1号や。」
すばるくんの言葉が、
わたしの中の何かを溶かしていくのを感じた。
歌っていいんだ。
お父さんがいなくても。
すばるくんは、わたしを
"岩音A"を求めてくれてるんだ。
歌って、いいんだ
渋「…だから、泣くなって笑」
『・・・・・っ』ﾋｯｸﾋｯｸ
渋「…」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ
何かが壊れたように
涙が溢れてきて
わたしは子供のように泣きじゃくった。
．
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作者名：ビッキー | 作成日時：2019年3月21日 22時
