勿忘草

山田side ページ12

ｶﾞﾗﾗﾗッ

山「慧くん！！」

急いで彼の元へと駆け寄る

山「大丈夫？体調悪くない？ナースコールないから心配したよ…」


ベッドに座ってる彼の額に手を当て脈を測る

良かった、熱も無いし心拍も安定してる

けど、ベッドテーブルの上にある食事にはまだ一口も食べてない様子



山「体調悪い訳じゃなさそうだね……どうしたの？食べれなそう…？」

慧「…お腹すいてない」

山「そっか、じゃあリンゴだけでも食べれそう？食べやすいように小さくカットしようか」


リンゴなら食べやすいのではないかと思い、フォークでリンゴを1口大にし

その一つをフォークで刺して、慧君に渡す


山「はい、これなら食べられる？」


なかなか受け取ってくれない慧君…

前任の担当医の残したカルテには、食は細いとは書いてあったけど、決して食べない訳ではなさそうだった

どうしたのかと心配になる


山「ちょっとだけでも食べよう？このリンゴ甘くて美味しいよ」


どうしても何か口にしてほしくて、「はい」と近づければ



慧「っ要らない！！」


ガシャンっ!


手を振り払われ音を立ててフォークが落ちる

彼は一瞬怯えた顔をして、すぐ俯いてしまった


そんな顔しないで？

これくらい全然大丈夫なのに…



山「ごめんごめん、無理やりだった俺が悪いね…お腹空いたら教えてね？今は薬だけ飲める？」


そう言うとコップを手にとって薬を飲んでくれた

それを確認してから食器を持ち病室を出る



山「…はぁ〜」



病室の扉を閉めてその場にしゃがみこむ

…どうしたら仲良くなれるのだろうか



高「山田先生、どうしたんですか！」


そこに通りすがりの雄也がきて、しゃがんでる俺を覗き込んだ


山「いや、慧君と全然仲良くなれなくて…」

高「大丈夫ですよ、きっとそのうち仲良くなれる。まあそういう俺ももう5年目だけど笑」



こんなに人の良い雄也でも、5年…

俺は何年かかるのだろうか、、今すぐにでも仲良くなりたいのに…


雄也に手を借りて立ち上がる

再び医局に戻りカルテに書き込み午前の検査結果を照らし合わせる



薮「涼介！もう上がんな？明日も朝からだろ？」

山「ありがとうございます、じゃあお先に失礼します！」


ベテランの医者は、新人の扱いなんてほんとに酷くて何も教えてくれないのが普通

その中彼は新人ドクターの俺にも優しくしてくれる
ふにゃっと笑う顔が特徴の薮先生


お言葉に甘えて、残りの仕事をささっと終わらせて今日は帰宅することにした

慧side→←山田side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す