当たり前*9 ページ11
彰人side
朝、寝坊したので教室に駆け込むと同時にチャイムが鳴る。
あぶねえ……あと少しで遅刻するとこだった。
急いで席に着き、俺より窓側の席に座るあいつの顔を盗み見る。
名前は、青柳A。
俺の相棒である冬弥の姉であり、今俺達Vivid BAD SQUADがチームに引き込もうとしている奴だ。
最近、ふとした時のAの仕草が目に止まる。
移動教室のことを忘れていたり、あいつの得意科目である数学の基本問題で計算ミスをしたり、俺が冬弥の相棒だと言うと自称、と付け足してきたり。
……いや、最後のは元からなんだけどな。
そしてホームルームが終わった今も、何処かで見たことがある表紙の本を訝しげに眺めている。
彰人「なんだよそれ、小説か?」
A「あ、うん。みたい。」
彰人「へぇ……『夜雫』。
どんな話なんだ?」
A「どんな話だっけ……。
冬弥の本だよ、これ。」
彰人「へぇ。
冬弥とA、仲良いな。」
A「まあ普通でしょ。
冬弥……まさか勝手に私の鞄に入れたのかな。
まあいいや、返しに行こう。」
Aはそう独り言のように呟き、俺の顔を見てからドアに向かって歩き始める。
彰人「なんで俺の事置いていくんだよ」
A「来ないと思って?」
彰人「行くに決まってんだろ。
お前が迷子になっても困るしな〜」
A「いやいや、子供じゃないんだし……」
そういいながら再び歩き出したAは……1年B組の教室と反対に向かおうとしていた。
無意識なのか、すぐに本来の向きに直って歩き始める。
A「冬弥は……あれ、居ない。」
彰人「いや、そこにいんだろ。」
教室の前のドアから全体を覗くと、1週間ほど前に席替えをしたらしく後ろの方の席で静かに本を読む冬弥。
実の姉弟である、しかも隠れブラコンなAが、冬弥を見つけられないなんてことあるのか?
最近のAは不自然な動きが多すぎる。
そう思いながら、俺はAより先に冬弥を、呼び出した。
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作者名:桃園天利 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/1eec8acd853/
作成日時:2021年5月25日 23時