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治くんとの距離が近い。体はくっついていないのに熱を感じる。
つーっとこめかみの辺りを冷や汗が伝う。なんだこの状況、初めてのことすぎてどう対処したらいいのか分からない。
私が固まっていると、後ろから治くんに抱きしめられた。お腹には鍛え抜かれた腕が回されている。
首筋に顔を埋められ、キャップ帽からはみ出している髪の毛が当たってくすぐったい。
「Aあったかいなぁ」
耳元で治くんが囁いた。
私は初めての温もりに、脳内は既にパニック状態。少女漫画は死ぬほど読んできたが、実際やられるのは初めてで、先程から心臓がうるさい。
この甘ったるい空気に耐えきれなくなった私は、『うわああぁ!!!!』と叫び声を上げながら試着室を雪崩のように飛び出す。
『むりむりむりイケメンの大安売り色気の暴力人の温もりの三点セット!!!』
「ちょ、A……!」
床に倒れ込みほぼ涙目で内に抑えていた気持ちを声に出す。
そして試着室を出てはっと気がつく。
(外には……侑くんと花音が……!)
目線を上げる。
侑くんと花音は、もうそこにはいなかった。
あとから焦って試着室から出て来た治くんも、二人がいないのを見てほっと息をついた。
『よ、よがっだあぁあ』
「わっ、A泣いとる!?すまんすまん、やりすぎたわ」
緊張から解かれ、自然と涙が溢れてきた。やりすぎた自覚はあったのか、治くんがすごく謝りながら服の袖で涙を拭いてくれた。
「あんまりピュアな反応するもんやから、ちょっとイジメたくなった」
『ドSかよ。腰抜けたから肩貸せや』
「しゃーないなぁ」
流石にもうイジるのはよそうと思ったのか、普通に肩を貸してくれた治くん。腰が抜けてふらふらな私をしっかりと支えてくれた。
もはやあれだけ近い距離にいたので、今はさほどドキドキもしない。
治くんは侮れないな、気をつけよう……。
そんな反省をしながら、二人で大人しく家へと帰っていったのだった。
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あまのじゃく(プロフ) - ういさん» やっぱちょっと訛ってましたよね!?萌えですね! (2020年8月17日 6時) (レス) id: 1bd81e41c7 (このIDを非表示/違反報告)
あまのじゃく(プロフ) - ことりさん» ぎゅんぎゅんw心臓大丈夫ですかw読んでいただきありがとうございます! (2020年8月17日 6時) (レス) id: 1bd81e41c7 (このIDを非表示/違反報告)
うい(プロフ) - 角名君標準語だけどイントネーションが関西ですよね!萌えました! (2020年8月17日 1時) (レス) id: a04005cb99 (このIDを非表示/違反報告)
ことり(プロフ) - 北さんんんんんん(悶) 頭撫でてはずるい…ぎゅんぎゅんしました…笑 (2020年8月15日 0時) (レス) id: 19c0d362e8 (このIDを非表示/違反報告)
あまのじゃく(プロフ) - 麗さん» ぎゃー!!ありがとうございます!! (2020年8月14日 23時) (レス) id: 1bd81e41c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱里 | 作成日時:2020年7月11日 8時