それぞれの誇り ページ23
早速、ローはヴォルフさんの腕に注射器を刺し、血をごっそりと抜いた。
それを、清潔な輸血パックに移し替えていく。あっという間にビニールパックは赤色の液体で満たされていく。
「じいさん、大丈夫か!」
「心配、要らん……!ちょこーっと目眩がするだけじゃ。軽い貧血程度のもんよ。
こんなジジイに構ってる暇があるなら、とっとと治療を済ませてしまえ!」
「ああ、分かった。それと、助かった」
「ふん、ギブ&テイクじゃ……この先一週間の家事はお前達に全てやってもらうからな……」
そんな事だけでいいのか、やっぱりヴォルフさんは優しい。
「ハティ、お前はガラクタ屋の様子を見ててやってくれ。一気に血を抜いたんだ、体調に変化があったら、すぐに知らせてくれ。
あとは、俺の仕事だ」
そして、リビングのテーブルに目線を向けるロー。その背中はなんか、頼もしくて、大きく見えた。
一人目のキャスケット帽の処置はすぐに終わったらしい。後ろからしか見ていないが、凄く早かった。
「ベポ!ペンギン帽をこっちに運べ!」
「了解だ!」
キャスケット帽と向かいのソファーに寝かせているペンギン帽を入れ替え、ペンギン帽をテーブルに寝かせる。
移動させる際、ペンギン帽の右腕からは、ポタリポタリと血が垂れている。
何やら、考えて立ち止まっているロー。
『ロー……?』
少し心配になり、声をかけてしまう。
「おれは、俺の医者としての誇りのために、コイツの腕を元通りに動かせるようにしてやりてェ……」
そうポツリと呟くと、
「ガラクタ屋!そこにある顕微鏡、借りるぞ!」
『ローってば…凄いや…』
「どうした…ハティ」
私の呟きにヴォルフさんが声をかける。
『誇りか…私は皆がフィンスターの誇りを守るため死んで行ったのに、私だけ、死ぬのが怖くて、天竜人に怯えて、ずるずる生きてきちゃったから』
そう言うと、ヴォルフさんは気だるそうに体を動かすと私の頭を撫でる。
「死ぬ事がお前の誇りなのか?違うじゃろ。今のお前に出来ることは、生き抜いて、そのフィンスターの誇りを守ることじゃ」
『……そうだね、うん、なんかごめん!』
私が笑ったのを見て、ヴォルフさんもまた、笑ってくれた
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とちょう(プロフ) - 嫁子ちゃん。さん» よめちゃん読みに来てくれてありがとうー!!!!!頑張って続き書くー!!! (2022年10月2日 19時) (レス) id: 9c17a4ec76 (このIDを非表示/違反報告)
嫁子ちゃん。(プロフ) - とちょーちゃん〜🌠読みやすくてすっごい好き!!無理しないで頑張って🎉続き楽しみにしてます! (2022年10月2日 19時) (レス) id: 4de2fab171 (このIDを非表示/違反報告)
とちょう(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます!トラ男落ち目指して頑張ります!! (2022年9月18日 12時) (レス) id: 9c17a4ec76 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説はトラファルガーローオチですか?できればトラファルガーローオチでお願い出来ますか?続き頑張ってください。応援してます。 (2022年9月18日 12時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とちょー | 作成日時:2022年9月17日 20時