E n c . 協奏曲 (ページ6)

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共鳴曲 . ページ6

　先輩が隣に置いた椅子に腰掛けると、初めて横原先輩の顔がしっかり見えた気がした。

　

　なんでも見透かすみたいな瞳に、ふわふわさらさらの黒髪。

　多分こういう人をイケメンって言うんだろうなと思ったら、誘われたことに急にどきどきし始める。

　「もう始めていい？」

　聞くなら聞くで戻ってこいよ、という言葉でぼーっと飛んでいた意識を戻す。

　「すみません」
　「UNCALLメドレーでいい？」

　俺そんな音楽知識無いしと言う先輩に頷く。

　指をゆっくり降ろして、ドの音階を押す。そのまま何個かの鍵盤を押すと、ゆっくりゆっくり壮大なメロディを奏で始めた。

　「……わぁ、」

　心の奥から浄化される様な、どこか無邪気で綺麗な旋律だった。才能とかじゃなくて、少しずつ焦った顔を見せる辺り、努力で培ったものだ。

　ピアノ相手にバトルを仕掛ける様に楽しそうに弾き続ける先輩の指から、UNCALLの高度で済んだメロディが生み出される。

　「……only you precious in my boredom life」

　小さな声で口ずさむと、先輩が驚いた様に演奏を辞める。

　1年前、中学の時、何度も何度も練習した大好きな曲。UNCALLの'BYE" 。

　途端、先輩の方が動いた様に見えてはっとした。

　「あ、…すみません、これずっと」
　「次行くよ」

　そしてまた鍵盤に指を降ろして、音楽を奏で始めた。