11 ページ11
(勇次郎side)
身体中に巡り抜けない、高揚感のような熱。
焼き付いてしまっている、舞台上の父の姿。
父の公演を観れば毎回のように感じるこの感覚。
……また、か…嫌だ……ほんとに…なんなの、これ…
「あれ、勇次郎ー?」
背後から聴こえた、最近よく聴く明るい声。
誰かなんて、振り向かなくとも分かってしまう。
「?…どしたの?」
「別に……Aは?」
「愛犬の散歩。といってもおじさんとこの犬」
「……そ」
歩き出せば、当たり前のように並んで隣を歩いてくるA。
数分経っても、歩くペースを少し早めても、全く気にする様子なく僕の隣を歩き続ける。
「…なに?用?」
「んーん。……景色いいとこあるからさ、ちょっと付き合って」
「なんで_______
「いっつも私が勇次郎のワガママ聞いてるんだからたまには私のワガママ聞いてよ」
「……いいけど」
『やったねー』と色素の薄い茶色のふさふさ毛並みを持つ小型犬に向かってAは笑う。
ちょうど夕日に被る、Aの姿。
………綺麗……
…って……僕、何思ってんの
ただ、ついてくだけ。
この気持ちのまま家に帰りたくはないから、むしろ今の僕にとってはちょうどいい。
「…着いたよー……何ボーッとしてんの?」
「いや…何も」
見惚れそうになってたのをどうにかしようって頑張ってただけ。
………なんて…言えるわけない。
連れてこられた場所は、ある公園。
ブランコや滑り台など、一般的な遊具があるごく普通の公園だった。
連れて来られたもののすることなんてあるわけもなく突っ立っていれば『こっちこっち』とAが手招きをしながら声をかけてきた。
ついていけばAが入っていくのは、少し細い路地。
周りからパッと見だと分からないような場所。
若干不審に思いながらついていけば、ものの1分ぐらいで急に視界が開けた。
目の前に広がっていたのは、輝くようなオレンジ色の夕日。
まるで僕らのためにあるのだと錯覚してしまいそうなほどで。
一瞬にして目を奪われてしまった。
落下防止のためか設置されている柵まで、自然と足が動いて。
しばらく見入ってしまっていれば、隣にAの気配を感じた。
91人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
若葉 - あぁぁぁぁ!!待ってましたぁぁ!私の好みにドストライクです! (2022年11月19日 16時) (レス) @page28 id: 7981b3d9d1 (このIDを非表示/違反報告)
朔藍(プロフ) - ひよっこさん» 大丈夫ですよー!ご心配ありがとうございます。 (2022年8月3日 19時) (レス) id: 7586c4e066 (このIDを非表示/違反報告)
ひよっこ - 掛け持ちして体、特に頭は大丈夫ですか‥?パンクしていませんか (2022年8月3日 17時) (レス) id: 91bebd90a7 (このIDを非表示/違反報告)
朔藍(プロフ) - ひよっこさん» 私はどっちも好き…ですね……曲を聴きながら書くことが好きなんですけど、好きな曲が一筋縄ではいかなかったり切なかったりするストーリーの恋愛曲が多くて。そういうのを聴いてると自然と物語もそっち寄りに…って感じです… (2022年8月1日 17時) (レス) id: 7586c4e066 (このIDを非表示/違反報告)
ひよっこ - 朔藍さんは甘々とシリアス どっちがお好きですか、私は甘々と溺愛系が好きです。 (2022年8月1日 15時) (レス) id: 91bebd90a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朔藍 | 作成日時:2022年7月30日 20時