検索窓
今日:16 hit、昨日:36 hit、合計:112,715 hit

40 ページ41

(勇次郎side)



自分がいる客席とは対照的に光り輝いている舞台。



そこにいるのは、着飾って真剣な表情の弟。



自分も物心着く前から通っていて、ずっと夢を見続けていた場所。



『あの言葉』を言われる前までは自分もこの舞台に立てるものだと思っていた。



稽古も必死になって頑張っていた。







「……はは、まじ、か」







『あの言葉』以降完全に絶たれたこの舞台に立ち、認めてもらうという夢。



新たな夢に向かって歩き出せているのだから、もう自分の中では区切りをつけられていると思っていた。





……そう、思ってたのに





思い込みと実際の感情は違ったらしい。



胸をギュッと掴まれたような苦しい不快な気持ちを感じる。



この嫌な気持ちが抜けない。





『お前には華がないんだ。だから跡は継がせない』





そう告げられて、夢を絶たれてからよく感じるようになっていた嫌な気持ち。



こんな感情がどんなものなのかなんて分からない。



なんだかもうどうでもよくなり分からなくてもいいと思えてきて、考えることすら止めてきたこの感情。



自分の大切なはずのものが自分を苦しめていく。



それが、ものすごく自分を不快にさせていく。



そんな、感じたくもない嫌な気持ち。



自然と視線は下がっていて、いつの間にか握られていた膝上に置かれている自分の拳が視界に入った。



それをなんだか見ていられなくなり、顔を上げて視線を光り輝いている舞台に戻す。





……僕だって、知ってる



光一郎が必死になって努力していること



実際に演技が上手いこと



………僕なんかと違って華があること





仕方がないものは仕方がないのだろう。



そう何度も自分に言い聞かせ納得させてきたはずだ。





……はず、だったのに





いつの間にかもう1部が終わったらしい。



数分間の休憩に入ったらしく、先程よりも客席が明るくなっていて舞台には幕がおりていた。



公演中は静まり返っていた客席がザワザワと騒がしくなっている。



この演目は3部構成になっているはずだからまだ終わっていない。



それどころか、半分もいっていない。



頭では、分かっているけれど。



……もう、この場にはいたくなかった。



客席から立ち上がり、足が出口の方に歩き出す。



 

この小説の続きへ→←39



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (66 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
222人がお気に入り
設定タグ:HoneyWorks , LIP×LIP , 染谷勇次郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

朔藍(プロフ) - ハリネコ@サブさん» ハリネコさん!!お久しぶりです!!連載中に頂いたコメントでもすっっっっっごく励まして頂きました本当に感謝感謝すぎる泣泣最高の読者様に読んで頂けて好きになって頂けてこれほど作者冥利に尽きるものはないです泣泣ありがとうございます大号泣 (9月13日 18時) (レス) id: 2d55a4ee9e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネコ@サブ - 藍朔さん‼お久し振りです。サブから失礼してますハリネコです!久々に読みたくなっちゃって来ちゃいました笑もう五週目とかほんとにこの作品好きすぎてやばーいいい笑何回読んでも最高です! (9月13日 15時) (レス) @page5 id: 690aee62a7 (このIDを非表示/違反報告)
あーー(プロフ) - 相川あゆさん» ありがとうございます!今更で返信遅くてすみません…続きも読んでくださると嬉しいです!これからもお願いします! (2021年12月31日 16時) (レス) id: 7586c4e066 (このIDを非表示/違反報告)
相川あゆ - 推します (2021年10月22日 7時) (レス) id: 1dc4ab95d2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:朔藍 | 作成日時:2021年10月21日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。