突然出会った王子様 【染谷勇次郎】

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(貴方side)



壁に掛けている時計が示す時刻は22時。



明日提出の課題もお風呂も夕飯も食べ終わり特にすることもなく、淹れたての温かいココアを片手にソファーに座りながら賑やかなテレビを眺める。



今日はバイトがない日だったから楽な日だったなーとぼんやりまったりタイムを満喫中。







ガチャ、ガチャン







テレビの音と私がココアを飲んでいる音しか聞こえなかいはずの空間で何故か玄関の方からなにか金属音が聞こえた気がした。



なにか金属音というか鍵を開ける音と言う方が正しい。





……ん？いやいやちょっと待って。え？鍵を開ける音？



…なわけないよね、うん。私一人暮らしだし。合鍵持っているのはお姉ちゃんだけのはずだし。社会人のお姉ちゃんは多分仕事終わりには私の家に来ないだろうし。



うん、そうそう。空耳だってば多分。じゃないと怖すぎじゃん。一人暮らしの夜に誰かが来るとか。





平常心平常心と小声で自分に言い聞かせながら、ココアが入っているマグカップを机に置く。そんでもってなんとなくテレビを消す。いや、意味なんてないけど。決して、もう他に物音がしないか怖くなってなんかテレビ消しちゃいましたーとかじゃないから。うん。







パタン、パタン







……うっそでしょ。え、もしかして私これ詰んだ？



足音まではっきり聞こえてきたんだけども。やばくない？





嫌な予感しか感じなくなってきて万が一のことがあればと、逃げられるように近くにあったスマホを片手にできるだけドアから距離をとる。もちろんスマホは110番にセット済み。



………待て待て待てなんで私臨場体勢なのこれ。





なんて自分に自分でツッコミを入れていれば確実に大きくなってくる足音らしき音。



誰か知らない人が近くに来ているということを意識すると嫌でも心臓が緊張から煩く鳴り始める。



リビングの中でドアから一番遠いところにいるといえ、そんなに距離はない。







キィ……







近くからドアが開いた音がして人の気配がする。



そこに立っているのは







「…………は？」







私と同い年ぐらいで深い藍色の綺麗な髪色をした前髪アシメの顔をくしゃりと歪めた男の子だった。




　

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