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しばらく、黙っていた生徒が唐突に口を開いた。
「先生の悩み事……当ててあげましょうか？」
と、生徒は私の返事を聞く前に続ける。
「奥さんはとっても可愛い人だけど、最近家族サービスができなくて仲は険悪だ……とか？」
私は驚いて、肯定も否定もできなかった。その通りだったからだ、仲が険悪で困っている。私の目下の悩みを聞かれればまず、コレを答えるだろう。
「その反応は当たりでいいですよね。……ふ〜ん、先生って確かに愛情表現とかあんまりしなさそうなタイプですしね。他の先生に面倒ごと押し付けられても断れないタイプでしょう？」
人の良さが滲み出てますしね、と笑って告げられた。
「……そこまで分かるのか」
「ま、分かりやすいというか、昔からの特技なんですよ。人の悩み事とか困ってることを当てるのが。褒められたものじゃないですけどね…………先生、ちょっとこっち来てくださいよ」
手招きをされ、思わず近くに行く。
するとーーーー
「これは、アルコール成分がないウォッカです。で、こっちがホワイト・キュラソーとライム・ジュース。……これをシェイカーに入れて振る」
カバンの中から、ウォッカやホワイト・キュラソーとラベルが貼られた瓶が出てくる。
私の記憶が正しければ、ウォッカは酒だったはずだが……
「あ、先生、大丈夫ですよ。さっきも言ったけど、アルコール成分全く入ってないんで……よし、できた」
そう言って、シェイカーの中身を、黒色のハート型の瓶に注ぐ。
黒色の瓶が、気泡によって白色に見えるカクテルが中に入ったことにより黒が濃いグレーに変わる。
「これは、ライラってカクテルです。これ、先生にあげます。もし、悩んでることがあるんだったらコレを飲んでみてください」
きっと、悩みが解決しますよ。そう言って生徒はまた人懐っこい笑みを浮かべる。
その時、放課後の最終下校を告げるチャイムが教室に響いた。生徒は、あっと声を上げると席を立つ。
「じゃあ、私もう帰りますね。先生、さようなら」
「……え、あぁさようなら。気をつけて帰るんだよ」
「ありがとうございます」
生徒が出て行った教室に、一人、渡されたカクテルを持って佇む。そして、しばらく考えた末に、小さな猫型の瓶の蓋を開けて、中身を飲んだ。
オレンジとライムの爽やかな香りの後に、ウォッカの独特の味が下の上に広がる。その甘さは、今までで一番美味しく感じた。
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人力車(プロフ) - 狂犬さん» コメントありがとうございます！そう言っていただければ嬉しい限りです！ (2019年11月12日 12時) (
レス) id: c2c8156d2a (このIDを非表示/違反報告)
狂犬(プロフ) - 面白いスタンドですね！とても勉強になります！（オリジナルスタンドを作る為の） (2019年11月9日 20時) (レス) id: 5579949a16 (このIDを非表示/違反報告)
手押車(プロフ) - とても面白いです！これからも更新待ってます！ (2019年10月29日 7時) (レス) id: 9f1d144e77 (このIDを非表示/違反報告)
人力車(プロフ) - コメントありがとうございます！期待に添えるように頑張ります！ (2019年9月23日 13時) (レス) id: 60356de8e5 (このIDを非表示/違反報告)
くとぅるふふっざけんな！(プロフ) - 最初の話読んでみて凄く面白かったのでお気に入り登録して続きを期待して待ってます(о´∀`о) (2019年9月23日 6時) (レス) id: b6db3cbd6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：人力車 | 作成日時：2019年9月22日 2時
