お義父さんのお呪い【青】

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父親は物心つく前に交通事故で亡くなったから、小さい頃からお父さんがいない生活を送っていた。授業参観では夫婦で仲良く来ている中に混じり母親がぽつんとひとりで立っている。寂しくはなかった。お母さんがいつも笑顔で優しく振る舞ってくれていたから。


すべてが崩れたのは、夏の終わり頃。アブラゼミが鳴いている天気のいい日にお母さんはマンションから飛び降りた。過労が溜まって我慢できない、死にたい、なにもかも手放したい、と書かれてある遺書を遺して。


大体私がすべて任せすぎたのかもしれない。家事も2日に1回はかならず夕食を作っていたし洗濯物とお風呂の準備は私がやっていたし毎日のお弁当も自分で作っていたけど、足りなかったのかな、なんて。


さすがに高校生の私にいますぐ独り暮らしはさせられない、という親戚からの要望で義理の父親として青柳ころんという水色の髪をした若い男の人と新しいアパートに住むことになった。


ころんさんは仕事はできるけれど、脱いだものをそのままにしておく癖が酷くて最初は手を焼いていた。男の人の着た物を洗濯するのは初めてで新鮮味があって、でも知らない人だから警戒しておこうという謎の壁。親戚だけど、会ったことないから、知らない人と同じ。



「Aって、あんまり僕の前で笑わないよね」

『なんでAなんて呼ぶんですか』

「え、だって僕お義父さん……」

『あはは！』

「ぬおう、Aの笑いのツボが分からない、、」



結果いい人だった。家事もある程度のことはできるので夕飯をよく一緒に作ったり無駄に広い浴槽を毎晩笑いながら掃除したり。


心臓の音が毎日煩かった。はじめは、こんなに男の人と近くで接するのは初めてだから緊張しているんだとばかり思っていたけれど、ころんさんが言えに来てから半年経ってもまだ胸のドキドキは治まる様子がない。


これ、って、


『……好き？』


叶わない恋がはじまった。




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