正真正銘、ゾルディック家の長女ですけど？ (ページ4)

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一旦イルミに部屋の外に出てもらっていつもの服に着替えた。
動きやすい服。母さんにはスカート履いて欲しいって言われてるけど動きにくいから却下した。

『イル、準備終わったよ』

扉を開け、部屋の外で待機してるイルミに声をかける。

「ん。飛行船の準備はしてあるから行くよ」

『待って、お姉ちゃん、ご飯食べてない。お腹すいた』

「あー、姉さんが遅いから先食べちゃった」

…非情だ。エルはそう切実に思った。
ぐうぅと空腹を主張し始めたお腹の音を無視してイルミの前を歩く。

「まあ、母さんの愛入りって渡されたパンならここにあるよ」

『成程、愛入り(毒入り)ねぇ。ちょーだい！』

「毒は平気になったの？」

『……まだすこーし苦手』

舌を少し出して顔を歪めた。
事実、エルは21年間毒入りのご飯や飲み物を摂取し続けてきたが、未だに慣れないのだ。

「はいはい、無理だったら言ってね。姉さんが動けなくなったらこっちが困る」

『む、お姉ちゃんそんなアホじゃないよ』

「アホでしょ」

『決めつけ良くないよ』

雑談をしながら私用船へと乗り込み、イルミから毒入りのパンを貰って口に放り込んだ。

『んむ、味は悪くない』

「毒入りだよ」

『知ってる』

パンを食べながらイルミに話しかけると、飲み込んでから話せと頭にチョップが降りかかってきた。
姉に手加減しない弟なのでズキズキいっている。

『美味しかったー』

「毒まわり始めてる？」

『頭がクラクラする』

頭が回っている感覚が気持ち悪く、エルは顔を顰める。
パンに含まれていた毒はきっと、致死毒だろう。これだけですんでいるのなら、前よりは耐性がついたのだと思った。

「ねーぇさん」

『なーに？』

「休んでていいよ」

隣に座っていたイルミの膝へとエルの頭が下がる。所謂膝枕の状態になったのである。
一瞬、何が起きたのかが理解できず頭が真っ白になった。

『…い、イルが、』

「なに」

『…デレた！反抗期からデレ期に昇格！？』

「気絶させるよ」

イルミからは少しイライラが見えはじめた。エルが嘘だよと伝えると、はぁとまた、ため息をついた。

『ありがと、イル。着いたら起こしてね？』

「はいはい」

イルミの膝の上でスグに寝息をたて始めた。そんなエルを見て、イルミがうっすら微笑んでいたのは見間違いじゃないだろう。

(おやすみ、姉さん)
(んぐ…)
(……無防備すぎる)

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