#３９ ページ39
【A】
結構疲れたな、なんて余裕な表情を見せる。
とうとうトントンさんの部屋まで来て、ドアノブに手をかけた、そのときだった。
「えっ、…誰ですか？」
「あ。」
後ろで聞こえた少し低めの声に思わず間の抜けたような声を出した。
これはやらかしたなんて、思う間も無く。
振り返って例の人…トントンさんがいるのを確認すると、私は一目散にかけていた。
最悪だ…！！
あと少しでゴールだったのに、なんでこんなキリの悪いところで見つかるかなあ…。
…必死になっているときに考え事なんてするもんじゃない。
ロングコートの裾をグッと踏み、盛大にコケた。
「やばい汚い。」
そんなどうでもいいことを吐き、床のほこりで汚れたコートをパンパンとはらっているときだった。
グイッと肩がひかれ、トントンさんと正面向きになる。そのまま私のことを抱き寄せるから、顔も見えずにそわそわした。
「えっと…トント…さ…。」
「…喋らんといてもらえる？」
はいい！！ごめんなさい！！
トントンさんの胸板に頭が押し付けられていると、心拍数の高鳴りが聞こえた。
おそらく怒っている…のだろう。
と思えば、私の被っていた帽子を手ではらいのけ、優しく頭を、髪を、耳を撫でるのだ。
くすぐったさもあったが、それよりも緊張で耐えられそうにもなかった。
しばらくこんな状態が続いて、大先生の存在を思い出す。
あのやろう、いつか覚えていろなんて、返すこともできないような恨みを持つ。
と、スッと音がしてトントンさんが少し屈んだのがわかった。しかし、まだ顔は見えない。
「なんで軍服着とるん。」
で、ですよね。
耳元で発されたその声に少しビクつきながらも詳細を話した。
【トントン】
誰の仕業なんや、これ。
おそらくAの性格上、こんなことはできないだろう。
探偵になった気分、というようないい気持ちではなかった。
たしかにAは可愛かったし、正直この場で押し倒しそうになった。
しかし、誰かが着替えさせたと思うと…いや、そうでなくともAにそんなことを命じられるような仲である幹部が羨ましい。
とりあえず理性を抑えろ…まだ待つんや…あと少し、あと少し…。
胸の高鳴りを鎮めようとするが、Aが時折腕の中でビクッとはねるのが面白くて、可愛くて。
いたずら心と言うんだろうか、それがくすぐられた。
それでわざと耳元で誰の仕業か尋ねてみれば…。
「だっ、大先生が…。」
…やっぱりお前かよ。
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夜飴月／黄泉月(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます。そろそろ終わりなので、私生活が安定してきたら更新します…！！ (2019年10月8日 19時) (
レス) id: 89c3a7601e (このIDを非表示/違反報告)
りんご - はじめまして！好きです(唐突な告白)気長に更新待ってます！ (2019年9月29日 17時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
夜飴月／黄泉月(プロフ) - 月さん» コメントありがとうございます。私生活が忙しく、なかなか更新できずにすみません…。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 89c3a7601e (このIDを非表示/違反報告)
月 - 好きすぎる！ (2019年5月23日 6時) (レス) id: 235ab58054 (このIDを非表示/違反報告)
有 - 夜飴月／黄泉月さん» はい！楽しみに待ってます！ (2019年5月5日 0時) (レス) id: 4839ac1ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜飴月／黄泉月 | 作成日時：2019年1月18日 20時
