#２３ ページ23
【トントン】
「…なんだあいつ可愛すぎかよ。」
思わず影から呟く。
シャオロンに用事があって庭まで来たはいいが、Aがいるなんて聞いていない。
シッマがいなくなったのに気がつかなくて独り言を呟くA。
『しっまぁ』と珍しく情けない声を出すA。
そして少し恥ずかしそうに、照れ隠しのように苗を運ぼうとするA。
「どうしよ。」
ここを通るのは少し気がひける。あれやな、気まずい。
どうするか考えていた時だった。
「…おも。」
そんな声が聞こえてチラリとAを見ると、苗が重くて運べずにいた。
１つ１つは軽いが、おそらく量があるからだろう。
少し迷った挙句、ため息をつく。
「…しゃーないな。」
ザッザッと土を踏みしめてAの方へ。本人は現れるとは思っていなかったようで、少し驚いた声をあげた。
「手伝ったるから。ほら、そっちの軽いの持って。」
しかし、Aは譲らない。別に書記長って言ったってそんな大層な人間とちゃうんやけど。
…ちょっとくらいええ格好させてや。
少し力を入れて苗の箱を引っ張れば、簡単に奪えた。
そのときの悲しそうな顔がまた可愛い。
…だめや、オちてきている。
「すみません…ありがとうございます。頼んではいないですけどね。」
「おん？１言余計なんとちゃうか。」
Aはぷいっと拗ねながらも、優しい笑顔を見せてひとらんに苗を渡しに言った。
俺は本来の目的であるシャオロンへの用事を思い出し、苗を土に置き、話しかける。
「なんでトントンここにおるん？」
「ダメか。お前にこれ…茶封筒来とったから。」
そう言って胸ポケットから封筒を出す。
きっと、前の外交の返事だろう。
これを受け取ると、シャオロンのさっきまでの煽り散らかした顔は笑顔へと変わり、『ありがとー！』と元気な返事を返した。
…書類の山を崩しに行くか。
と、気乗りしなかったときだった。
「トントンさん、ありがとうございます。あと、お疲れ様です。」
今まで見たこともなかったような、とびきりの笑顔が降ってきて困惑する。
「お、おん。」
我ながら酷く恥ずかしい返事をした。
すると、すっと踵を返してひとらんの方へ。
かぁっと顔が赤くなるのを感じた。
そして、少し不満さがある。
「…やっぱり俺にこういうのは似合わんな。」
そっと呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1220人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜飴月／黄泉月(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます。そろそろ終わりなので、私生活が安定してきたら更新します…！！ (2019年10月8日 19時) (
レス) id: 89c3a7601e (このIDを非表示/違反報告)
りんご - はじめまして！好きです(唐突な告白)気長に更新待ってます！ (2019年9月29日 17時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
夜飴月／黄泉月(プロフ) - 月さん» コメントありがとうございます。私生活が忙しく、なかなか更新できずにすみません…。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 89c3a7601e (このIDを非表示/違反報告)
月 - 好きすぎる！ (2019年5月23日 6時) (レス) id: 235ab58054 (このIDを非表示/違反報告)
有 - 夜飴月／黄泉月さん» はい！楽しみに待ってます！ (2019年5月5日 0時) (レス) id: 4839ac1ad2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜飴月／黄泉月 | 作成日時：2019年1月18日 20時
