【w.r.w.r.d.!】燃ゆる思ひを【短編集】

それだけ【zm】【syp】 ページ10

《軍パロ》


我々国にて幹部を務めている私は、ゾムとショッピ君に夕飯の後、庭に呼び出された。

この２人に個別で呼び出されるなんて初めてだ。

疑問を抱きながらも綺麗な階段を降り、ひとけのない庭へと向かう。

するともうすでに２人ともおり、獲物を待ち構えるかのように立っていた。


「どうしたの？」


率直に問う。


「いやーっ、A。お前に観光客の容疑がかかっとんねん。」


…はっ？

観光客…他国からのスパイの疑惑がかけられている？

特に思い当たる節も無いし、私は昔からこの国にいた。


「何かの間違いだと思うんだけど。」


「間違いだったらええんやけどな。」


そう言って懐からナイフを取り出してこちらへ投げるショッピ君。

それをしっかりとキャッチし、思惑を読み取ろうとする。


「勝負…ってこと？２対１で？」


「話が早いと助かるわ。」


ナイフを眺める。

…本物。

というか、ふざけんな、このPS高い組に勝てるわけがないだろ。

…でも。


「私は無実だから。」


手中の刃物を握り直した。

そして、相手２人と目配せをすると、それを一生懸命ふるう。

しかし、ゾムの身軽さとショッピ君の計算高い最善の戦い方であっさり追い詰められる。

精神的にも、肉体的にも。

とうとう壁に追いやられ、ゾムがナイフをこちらに向けた瞬間。


「…え？」


頰には暖かい手。

しかし、目の前に貼り付けられた笑顔はもはや真っ黒。

ショッピ君も、嘲笑うかのような視線をこちらに向けていた。


「Aが観光客？そんなことあるわけないやん。」


「まして、俺たちが探るなんてことも…ですよね、ゾムさん。」


…っ、まさか！


「はめられた…？」


今思ってみれば、背後にある壁は城を守るために聳える…要は、城内の一番端。

そして今の時間帯は夜、誰かが通ることもない。


「どうするショッピ君。」


「あーっ、でもこの感じやと本当に観光客かも。調べた方がええかな、これは。」


ニヤつきながら２人は楽しそうに私を精神的に雁字搦めにする。


「拷問するか。どうせなら、互いに楽しめるやり方で…。」


「ゾムさん冴えてますねえ！」


「い、いやちょっと待って？おかしいって！！」


そう、少しでも声を荒げれば。


「ええから黙っとけ。」


と、口元に手をやられる。


「Aさん、わかってください。俺らはただあなたが好き、それだけなんすよ。」


『それだけ』か。

いつからこの言葉はこんなに重くなったんだよ。

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