食害【zm】 ページ11
「かんぱーい！」
元気のいい声が響く中、私は落胆する。
完全にやらかした、と。
「ん？どしたん、A飲まないん？」
そう言うと喉を鳴らし、ビールを飲むゾム。
別に、酒が嫌いなわけじゃないし、むしろ今は仕事終わりなので、求めている。
でも。
「あっ、店員さん。焼き鳥こっからここまで。」
メニューを指で横になぞって注文する会社の同僚であるゾムに店員さんも多少困惑していた。
そう、やらかしたと言ったのはこれ。
『食害』。
仕事の帰りに捕まったのが終わりだった。
苦い顔でビールをすする私のもとに、焼き鳥の山が届く。
「うわぁマジか…。」
「なんや、今回は俺が払う言うたやろ？心配せんでもええんやで！」
心配なのはお前の懐事情じゃない私の身体だ。
でもお腹も空いていて、とりあえずねぎまを一本。
「あっ、美味しい。」
思わずそう呟く。
「せやろ。ここお気に入りなんや。」
ふにゃりと柔らかい笑みを見せたゾムに少しドキッとした。
すると、だんだん酒が回ってきたのか、少しふらっとする。
しかし、この時間が楽しくて、我慢。
「あっ、この皿全部Aのやから。」
指差す焼き鳥の山。
前言撤回、危機ですね。
やっとの思いで焼き鳥を食べ終えるともう終電はとっくに終わっている時間。
店に出た時思わず口にした。
「…終電過ぎちゃった。」
困り眉で言ってみれば、ゾムは少し慌てて考える。
数十秒黙った末に、申し訳なさそうに言う。
「せや、俺の家こーへん？あっ…嫌だったらええんやけど、近いしタクシー拾えば全然…。」
「いいの？でも、やっぱり迷惑だから…。」
少し引き下がれば強引に腕を掴んで満面の笑み。
「ええって！！やから、お前は遠慮しすぎなんやって！」
タクシーを止めると、無理やり中に連れ込まれ抱き寄せられる。
ゾムは運転手さんに指示をして車を走らせた。
すると運転手さんは安全運転のまま、明るい声を発する。
「彼女さんと一緒ですか？いいですねぇ、若い！！」
さすがに顔を赤らめる。
彼女じゃないんですが！
「いやあ、自慢の彼女なんすよ。なにしろかわええし。」
そんな風にからかわれ、思わずムッとする。
「…ゾムも食害するけど、かっこいいし優しいし、自慢の彼氏だよ。」
仕返しとして、それだけ言ってやった。
私たちが本物のカップルになるのはまた別の話。
今でもタクシーはよく利用する。
その度にあの日を思い出すんだ、食害を。
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夜飴月／黄泉月(プロフ) - 悠哉さん» リクエストありがとうございます。了解です！ (2019年1月4日 23時) (
レス) id: 89c3a7601e (このIDを非表示/違反報告)
悠哉 - はじめまして！リクです！ツーマンセル組(zm syp)で軍パロが見たいです！落ちはなんでもおっけーです (2019年1月4日 23時) (レス) id: 23affa0a0e (このIDを非表示/違反報告)
夜飴月／黄泉月(プロフ) - 甘党吸血鬼なづさん» リクエストありがとうございます。承ります！ (2019年1月3日 22時) (レス) id: 89c3a7601e (このIDを非表示/違反報告)
甘党吸血鬼なづ(プロフ) - リクエストなんですけど、エミさんで学パロみたいなのって出来ますか？ (2019年1月3日 22時) (レス) id: 544e4af6c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜飴月／黄泉月(プロフ) - 白華時雨さん» 同い年で自らは堕ちていき、それでも彼女のことは心配するという、クズさの中に塗れた優しさを書いてみました。そこまで考えていただけるとは思っていませんでした、ありがとうございます！ (2019年1月2日 14時) (レス) id: 89c3a7601e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜飴月／黄泉月 | 作成日時：2018年12月31日 22時
