ニーナ - 2 ページ2
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「アイスティーひとつ」
「あ、……じゃあ、私も同じので。」
『久しぶりに会ったんだからお茶でも』。
そんな定型文と共に俺とAが訪れたのは、駅構内にあるチェーンのカフェだった。
ひとまずメニューを流し見し、注文を済ませる。
聞けばどうやらAは数時間後には予定が入っているらしい。それまでに少し買い物でもと思っていたところ、そこで偶然俺と再会したんだと。
全く変な偶然もあるものだ。たまたま踏んだ上着が大学の同期のものだったなんてそこらに転がっている話じゃあるまい。
「………」
「………」
……とは、言え。
この空間の気まずさというか、違和感というか、…とにかく言い表せないものは、一体。
────思い出せる範囲では、俺とAの仲は決して悪くはなかった。何なら良好だったと言える。
席が近くなれば時折会話を交わし、数人での飲み会でも幾度か一緒になったりもして。2人で遊ぶことこそなかったが、良い友人であったのだ。
……しかしまあ、その『良い友人』が一目見ても思い出せぬほどの変わりようだと、今のAを見ては素直に思う。
黒と茶の混じっていた髪は明るく脱色され、清楚に纏められていたはずの服は派手なものになり。
化粧は俺が見てもわかるほどに厚くって、その上小物は値段の張りそうなものばかり。靴に至ってはヒールの高すぎる。
大学を卒業してから4年と少し。
確かにもう同期は若さが抜け、何なら子どもまでいる奴もいる、けれど。
「……お前、服の趣味そんな派手だったっけ？」
……これはその、“ 変わった ” の範囲を逸脱しすぎではなかろうか。
そう言わんとしているのがわかったのだろう。縮こまっていたAは更に身を小さくさせ、弱々しい苦笑いを浮かべた。
目が泳ぎまくっている。数度口を開いて閉じ、何かを口にせんとしていることはわかるのだけれど、どうやらその先が出てこないらしく。
そうこうしているうちにアイスティーが机に置かれた。
……店員にぺこりと頭を下げて礼を言うその姿だけは、俺の知る大学時代の彼女とそう変わりない。
Aは未だ黙りこくったまま。
上手く言葉の出ない様子を見て俺はひとつ息を吐いた。別に追い詰めているつもりはないのに、変な罪悪感がある。
「……じゃあ、今何してんの？」
……これはあれだ。俺が何かを言わねば話が進まず、ただ時間を浪費するだけのやつだ。
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r(プロフ) - コメント失礼いたします。ひっそりと『マリア・テレジアへ賛美歌を』のAルート／Bルートお待ちしております……！ (2022年5月8日 13時) (
レス) id: 4f9004a1a0 (このIDを非表示/違反報告)
まるまいん - はじめまして、本日初めて作品を知りシリーズを最初から最後まで全て読ませていただきました。登場人物のリアリティー、簡潔ながらわかりやすい描写と気になるストーリー構成、どれもとても魅力的でした。続きも楽しみにしております。 (2022年4月25日 4時) (レス) id: 3aac2cf622 (このIDを非表示/違反報告)
みゃお - 初めてコメントします！どのお話も本当に引き込まれて大好きです…！ラブレターには名を記せの続編がどうしても読みたいので、いつか書いていただけたらと思います。よろしくお願いいたします！ (2022年4月18日 0時) (レス) @page21 id: d140b06251 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 更新されていてびっくりしました…！ これからも応援させて頂きます。 (2022年4月1日 0時) (レス) id: db21360bfa (このIDを非表示/違反報告)
凪(プロフ) - 良質な読みものに心臓がドカドカする感覚をものすごく久しぶりに味わって感動しています…これからも楽しみにしています！！どうかご無理はなさらず！！ (2022年3月31日 0時) (レス) @page33 id: 86acd73901 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：290円
| 作成日時：2020年10月24日 6時
