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可能性 ページ14

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…………終わった。


いやいや無理無理無理。これは流石に無理すぎる。自分が無理。何?焦ってビビって手叩き落としてトイレに駆け込むって。小学生?

現在地はオフィスのトイレ内。駆け込み寺が如く飛び込んだ私に尿意があるはずもなく、ただ頭を抱えてその場に立ちすくんでいた。


さっきまではまだポーカーフェイスをギリ演じ切れていたと言っていいはずだけど、ここまであからさまでは流石にもう手遅れだ。

私が動揺しきっていたことも、その原因が3年前にあることも──伊沢があの約束を覚えていればの話だけど──気付かれてしまったはず、で。



「……はーー……、」



ここまで自分のメンタルが脆弱だとは思うまい。溜息を大きく大きく吐いた。


……いや、待てよ。まだ伊沢が約束を忘れている可能性もあるのか。

何せあれは3年前の出来事だし、私も伊沢もだいぶ酒が回っていたはず。記憶を飛ばしていたって不自然はあるまい。

……まあ同じくだいぶ酒が回っていた私はその約束をしっかり覚えてるんだけど。何なら山本くんも知ってるんだけど。


とはいえまだ希望は捨てちゃいけない。伊沢が約束を忘れていることに賭け、知らない顔で過ごすしかなさそうだ。


そう決めたのなら気合を入れねば。

よしとひとつ拳を握り、トイレの扉を開けた。一応の偽装工作に手を洗い、スタジアムに向かうサッカー選手が如き足取りでオフィスへと戻る、と。



「……あれ、Aさんだ」



その場にはライターが数人だけ。

先程までこの場にいたはずの伊沢たち3人は姿を消し、どうやら席を外しているようだった。


パッとパソコンから顔を上げ、私にそう挨拶をしてくれたのは乾くんだ。他のみんなも続くようにおはようございますと一言。いい後輩だ。



「えーっと、……伊沢たちは?」



時計を見ればトイレに駆け込んでからもう30分が経過していた。……全く感じなかったけど、どうやら私はかなりの時間立てこもっていたらしい。



「撮影らしいですよ。さっき須貝さんが来たんで、その4人で」

「あー……」



なるほど。助かったと言うべきか、わざわざ覚悟まで決めたのに肩すかしを食らった気分というか。……いや別に良いんだけど。



「あ、そういえばAさんって明日誕生日でしたよね。30歳でしたっけ?」



そんな感情は露知らず、乾くんは輝いた目でそう言った。……くそ、今その話題は私に効く。別に乾くんに非はないんだけども。






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後輩として→←非力



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(プロフ) - すごく好みの雰囲気です…。更新楽しみに待ってます!!頑張ってください (2021年2月23日 23時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
オレオ_ッピ推し(プロフ) - 何この話どタイプ……気長に更新を待ちます。( ºωº ) (2020年11月5日 1時) (レス) id: dfcf88994a (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 私も大好きです…更新楽しみにしてます( ^ω^ ) (2020年10月29日 21時) (レス) id: cb54059665 (このIDを非表示/違反報告)
こあら(プロフ) - 何これ好きぃ……………… (2020年10月19日 8時) (レス) id: df8e2a19f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:290円 | 作成日時:2020年10月9日 19時

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