クロネッカーが見た三千世界〈 QK 〉

かはゆくおぼえ - 5 ページ5

side : kwmr




限界だった。


本当にもうダメ。Aの方を気にして何事も頭に入らなくなった。

普段なら山本と仲良くしている光景くらいよく見ているのに、自分が避けられているともなれば無視できないのが本音。



仕事は手に付かないし、些細なミスを繰り返してしまいには福良に休んできていいよと言われる始末。どうすべきなのだろう。




「……」




ソファにごろりと寝転がった。


Aの方から話しかけて来てくれるだろうなんて夢は見ない方がいい。あいつは話さない期間が長くなるにつれどんどん気まずく感じてしまうタイプだ。



こちらも行動を起こさず、向こうも何もしないとなれば向かう先は疎遠たった一つ。


そうなれば恋も想いもクソもない。これだけはダメだ。





……まあ、となる、と。

こちらから解決を試みなければならないのだけど。




恐らく、…いや、きっとAはこちらの気持ちを知っている。ただ誘われただけで避けられることなんてないだろう。


知った上で気まずいと判断し、こうして1週間も僕を避けているのだ。

つまり、今何もかもを告白したところで良い返事を貰える可能性ってのは無いに等しい。




…いや、だからといって。

このまま話さずに放っておくのなら、やはり今まで以上に距離は離れていってしまうだけで。


それは無理。というか1週間話さないだけで無理なんだからこれ以上関わらないのは僕の精神衛生上頂けない。




やらない後悔よりやる後悔だとか、後悔は美徳の春だとか、そんな言葉は無責任に投げかけられるけれど。


仕方がない。今はそういったペラついた言葉に寄りかかって頼るしかなかった。






このまま疎遠になって保身に走る気はない。


だって好きなのだ。振られたって問題はない、振り向かせればいいだけ。




とにかく今の1番はAと話すこと。マジでこのまま避けられ続けたらそろそろ死ぬし、山本への嫉妬でどうにかなりそうだ。



振られたらその時考えれば良い。

計画性がないだろうか。まあいいだろう、世の中に幾万とあるポエムじゃ恋に地図はないなんて散々言われているのだから。




そうと決まれば話は早い。

結論は案外簡単で、最初からこうしておけばよかったんだとふと思う。





大丈夫、大丈夫。


…そうだった、もう誰かのアドバイスなんて必要なかったのだ。






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