クロネッカーが見た三千世界〈 QK 〉

思へれど - 3 ページ3

.




……最近の話、なのだけど。


何というか、どうというか。如何にして形容すべきかはわかりかねていることが、私の頭の中を占領している。



少し前のことだ。これはクリスマスイブの前の日の話。

友人からクリスマスパーティーのお誘いを受けていた私に、とある──…ええと、まあ河村さんなんだけど。河村さんが不可解なことを言い出して。




『……クリスマス、一緒にいたいんだけど。予定ある？』




…思い返すだけで変な汗が出そうだ。


私は生憎のこと可愛らしく鈍感なわけでもなく、恋愛ごとに疎いわけでもなければ察しが悪い天然なわけでもない。




クリスマス、一緒、予定。


…なんだこの……なんだ、なんだこの、『少女漫画感』は！！




はっきりと言おう。めちゃくちゃ自意識過剰であるというフィルターを掛けたとは言え、その、『意識されてる』感じがすごくって。



あの時の視線、表情、声色、全部思い返せてしまう。

恋愛ドラマや少女漫画の世界を訪れたことがあるわけではないけれど、きっとああいう雰囲気なんだろうと想像できてしまうほどには鮮やかで。




あれからだ。まさにあれから。


あの日から私はまともに河村さんの顔を見れなくなってしまった。一部のライターさんに心配されてしまうほどにはあからさま。でもそれしか方法がなかった。



今日だってそうだ。

右端に座る河村さんを避けるように左端に座ったし、斜向かいの山本くんに怪訝そうな顔をされながら執拗に絡んで気を紛らわせて。



もうこんなことを続けて1週間になるだろうか。

でも未だに河村さんを見るだけで喉が詰まったような感覚が襲うから、私にはこうするしかなくて。








「…ねー、Aちゃん」



お昼時。

最近の日課と化している山本くんとのファミレス巡りの最中、各々注文をした直後に山本くんがそう切り出した。




「ん？」



山本くんは両手でランチスープのカップを包み、僅かに目を細める。…呆れていそうな顔だ。





「そろそろ河村さんと話してあげたら？」


「……」


「僕最近すーっごい睨まれてるしさあ、これ以上河村さんと仲悪くなりたくないよ」




ごもっとも。大正論。確かに今この状況下で1番可哀想なのは私に付き合わされてる山本くんである。




……でもその、頼らないとやっていけないというか。



そう言うと、山本くんは「めんどくさ…」みたいな顔で眉間に皺を寄せた。ごめんて。






→

きみは何とやら - 4→←神代からきみを - 2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す