逃避抗 - mzkm ページ1
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「…ねえ、何で別れないの？」
とある日の夜8時。
突然家に上がり込んできた友人──Aにそう問うと、机を挟んで向かいに座る彼女は視線を俯かせた。
「何？そんな分かりやすく浮気されといてまだ好きなの？」
見やるのはAの目。綺麗で整った顔立ちに付いた大きな瞳は、バツが悪そうにきょろきょろとあっちこっちへ動いている。
端的に言うと、である。
Aの彼氏は女がいながら分かりやすく浮気するような奴だった。
俺と同じ学部で同期の彼氏はとても温厚な奴だったはず。成績も優秀で、家もそれなりの病院だ。
それが一転、一目惚れで1年前に付き合ったAには束縛が厳しいらしくて。
まずは男の連絡先を消し、異性と会うなとしつこく言い付けたらしい。
それでも男友達と話しているところを見かければとにかく怒りをぶちまけ、果てにはどんな思考に至ったのやら、見せしめと称して他の女を抱いた。
それを聞いて以来、俺はこうして別れればと口を出すことが増えた。当たり前のことだけど。
けれどもAは毎回曖昧に笑ったりでごまかすだけ。別れる気がないのは手に取るように分かる。
「もうずっと前から言ってるじゃん。このまま行っても幸せになれないよ、A」
一応客人だからと出したお茶には手を付けられていない。彼女は相変わらず黙りこくったままだ。
「……で、でも、」
「……」
「…私が、男の人と会わなかったらそんなことしない、し。
…彼も本当はあんなことしたくないんだよ」
…散々浮気されといて何言ってんだか。
「私が悪い、から。…仕方ないよ。…男の人と会わなかったら良いだけだし」
大きな溜息を吐く。呆れた。此の期に及んでまだ彼氏を好きだと庇うのか。
ただAは彼氏に学歴を求めるような奴ではないし、本当に彼氏のことが好きなのだろう。余計に救いようがない。
目が合い、ふいと逸らされた。…ああ、これは重度だ。
「…じゃあ、何でここに来たの？彼氏に知られたらまた怒られるんでしょ」
「……そう、だけど」
重く重く沈黙が流れる。時計の秒針の音だけが鼓膜を震わせた。
「…だから、今日、で。
お、…終わりにしようと思って」
細く、小さな声。耳を澄まさなければ秒針に負けてしまいそうなくらいだ。
「……颯くんと会うの、これっきりにしたいの」
何となくそう言われる予感はしていたのに、いざ言われると変に胸が痛かった。
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山田 - 本当にお話を考えるのもそれを文章にするのもお上手でただただ尊敬です… (2022年10月12日 0時) (
レス) @page24 id: 5e51f51780 (このIDを非表示/違反報告)
あー - 河村さんの話がめっちゃ良かったです! (2020年8月21日 18時) (レス) id: e630ce1c5f (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 290円様。あなたの三角関係系の小説すごく好きです。もちろん他の作品も好きですが、これらは小説としての魅力がずば抜けてます。あとたまに読み手に一抹の恐怖を与える作品も最高です。起承転結がしっかりしていて大好きです。まとまりのない長文を失礼致しました。 (2020年1月29日 3時) (レス) id: e047a9674f (このIDを非表示/違反報告)
むー - 好きすぎて更新されるたび心の中でガッツポーズしております。これからも楽しみにしてます…！ (2020年1月22日 21時) (レス) id: 1dbbe6e605 (このIDを非表示/違反報告)
めろぱん - コメント見て頂けたようで嬉しいです！後日談楽しみにしてます…ありがとうございます…あと他の方もコメントされてますがキューピッドの続編のキャロルもめっちゃすきです…悲恋系のお話大好物なので最高です…心を鷲掴みにされました。こちらのifも楽しみにしてます！ (2020年1月15日 0時) (レス) id: 18726b033e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：290円
| 作成日時：2019年9月25日 17時
