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「さ...、Aさん！」
『……ぁ？』
「聞こえますか！？」
『ひろ、なかさ...？』
「そうです、落ち着いて下さい」
息の詰まるような長い長い沈黙は突如終わりを迎えた。薄暗い灯りの下に浮かび上がるのはグルッペンではなく、コージーと払々さん。私の手を握り、背中をさすっていたのは必死な形相の弘中さん。彼のすぐ傍らでは光源を手にした晴さんがいた。
ぐるりと見回してみてもグルッペンの姿はどこにも無い。蜃気楼のように消えてしまった。いや、そもそも彼は死者であって、この場にいられるはずがない。つまり、先程のグルッペンは私が作り出した幻覚に過ぎなかったのだ。
「深呼吸してください。ゆっくり、ゆっくり。僕に合わせて」
一度認め、自分でも整理がついたと思っていた彼に対する心残りは全く持ってお門違いであったのだ。女々しくも彼の残像に縋り、彼が生きていると信じて疑わなかった自分があまりにも浅ましい。あり得ないほど早く波打つ心臓を落ち着かせようと、言われた通り規則的に繰り返される彼の呼吸に合わせ、息を吸い込み吐き出す。それを数回繰り返せば徐々に心は落ち着いたのだが、比例するように手の震えは酷くなる。
「Aさん、大丈夫です。一緒に帰りましょう」
「あなたは一人じゃありません。私たちもいますから」
一向に震えが止まらないのを見かねてか、反対の手を晴さんが取った。それが彼が先程のグルッペンと重なり、どこか遠くへ連れて行かれてしまうのではないかと怖くなり、思わず体が大きく跳ねる。恐怖のままに振りほどこうと手を払うものの、彼は更に強い力を込めたため払うことは叶わない。暴れ回る私に辛抱強く声をかけ続け、いくらか経った頃ようやく私は平静を取り戻した。
『ごめんなさい、私...』
「Aさん、あまり深く考えすぎないで下さい。今はここから出ることを最優先にしましょう？ね？」
『...はい』
「大丈夫です。私たちは帰れますから。...あの、申し訳ないんですが、払々さんを見ててくれませんか？先程あのニュージーランド航空の旅客機を見つけたんです。何か手がかりがあるかもしれない」
『わかりました。では、コージーさんと払々さんと一緒に待ってます』
行ってきます、という言葉と共に固く握られていた手がゆっくりとほどかれる。もう私の手は震えていなかった。
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銀(プロフ) - 第一次とPypyさん、kjでカロパをしていてほしいと思いつつ、夢主さんの取り合いが見てみたいですね(笑) 今でも読み始めた感情が蘇ってきます。素晴らしい小説をありがとうございました。感想戦行ってきます (2022年8月8日 23時) (
レス) @page26 id: 321732a1a4 (このIDを非表示/違反報告)
銀(プロフ) - まずは完結おめでとうございます。そしてありがとうございました。何周したのかわからないくらい愛読してました。界隈から少し離れていたのもあって久しぶりに見てみたら完結していて……読了後はなんともいえない感情に満たされました。 (2022年8月8日 23時) (レス) @page26 id: 321732a1a4 (このIDを非表示/違反報告)
Contrast(プロフ) - 完結おめでとうございます！ 最後の方は当時リアタイしてた時の感情を再び感じてしまい涙腺崩壊させながら読んでいました。この様な素敵な小説を有り難うございました！！ (2022年6月19日 7時) (レス) @page26 id: 415fb20f0e (このIDを非表示/違反報告)
YAKIRINGO(プロフ) - 前作めちゃめちゃ泣きました......！思わず最初から一気読みするほど面白くて、続きが気になります！！無理せず更新頑張ってください！！ (2022年4月8日 22時) (レス) @page23 id: fdfc39bf59 (このIDを非表示/違反報告)
セイラ(プロフ) - 更新ありがとうございます！！！！いつ見ても素敵な作品...ラストシーン楽しみにさせていただきます！！！！！！ (2022年4月5日 18時) (レス) @page23 id: fb0de82876 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜隠 | 作成日時：2020年9月24日 17時
