無機質へ色彩という祝福を───

無機的拒絶(ｱﾆﾎﾟｹ) ページ36

貴｢…''兄様''、ありがとう。

デント様、アイリス様、ありがとう…

お姉様達も、サトシ様も…ありがとう……｣

Aは1人名を呼び、感謝を述べる。

アイ｢なんで…！｣
デン｢どうして…？｣

デントもアイリスは衝撃による驚愕もあったが、

それ以上に、Aの様子の違和感に気が付いた。

バー｢……｣
ヘレ｢……｣

バーベラとヘレナはAに悲しげな表情を向ける以外、
何も出来なかった。

それほどに、Aの微笑みは徹底されて穏やかで、

まるで、世捨て人のような悲しげなものに映った。

N｢……(A、どうして…そんなに悲しんでいるんだ。)｣

その表情はゲーチスには見えない。

ゲ｢Aが、感情を…｣

貴｢お父様…｣

ゲーチスは上機嫌な微笑みを浮かべ、
Aを見る。

貴｢お父様に、これを差し上げます。｣
ゲ｢？｣

手渡されたものは、スファレライト。

鉱石が好きで、感情を表す術を失った後も
反応を示した唯一のもの…

ゲーチスはその鉱石を受け取った。

貴｢硬度の低いものです、扱いにはお気を付けて…｣

ゲ｢''調和''…ですか。｣

石言葉を知っているゲーチスは微笑み、
その鉱石を懐にしまった。

その姿だけを見たら仲の良い、

理想の親子のように見えるだろう…





貴｢調和とは、2つのものを互いの釣り合いを指します。

今こそ、理想と真実の釣り合いを正さねばなりません。｣





しかし、次にAが口にしたのは、








貴｢──故に、私のかえる場所は、



お父様の手の中ではありません｣



慈愛の肯定でも、調和の延長でもなく、

無機的な拒絶だった。



















〈スファレライト〉
石言葉:調和、裏切り者、幻惑

ギリシャ語で｢裏切りの意｣を意味する、
｢sphakeros｣が名前の由来とされている。

贖罪と罰(ｱﾆﾎﾟｹ)※暗いので注意→←父との再会(ｱﾆﾎﾟｹ)

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