理想では無い真実(拾われた夢主)終 ページ29
ゲ「ただいま戻りましたよ、A…」
貴「おかえりなさい、お父様」
拾った時より既に10年近くの時が経った…当初に比べると見た目は年頃の少女と同等か、少し幼いくらいである。
部屋にあるおもちゃ箱に手がつけられた形跡は無く、あるのは床に散らばる鉱物学書や手入れをしていたのであろう鉱石標本のケースばかり。
実にAらしいという気持ちと、Aに人間らしさを持って欲しいという気持ちが綯い交ぜになりながら、ゲーチスは本日も手を伸ばし、Aの頭を撫でた。
ゲ「今日は何を学んだのですか?」
貴「はい、本日は……」
Aは淡々と今日あった出来事を話す。
そこには虚勢も花もなく、事実のみが淡々と告げられる。
飾る事も謙遜することも無い…親子の会話というよりも、もはや報告のようなもの。
…ゲーチスには親子というものが分からない。
知らない訳では無いが、それは遠い昔に押しやり忘却した故に今や過去の遺物としか見ることができないのである。
思い出す切っ掛けさえ見つからない…
ただ、それでも1つ確かとしたものがあった。
ゲ「A、おいで。」
貴「?」
自身の野望の為にNに向けることは許されぬものを、この少女にだけは惜しみなく向けよう。
その気持ちは理想ではなく、真実であった。
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作者名:イヴ | 作成日時:2024年3月7日 12時