無機質へ色彩という祝福を─── (ページ28)

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求めたもの(拾われた夢主) ページ28

電気石の洞穴で出会い、拾った少女はAと名付けられ、ポケモンの存在しない閉鎖的な部屋で育てられた。

初めこそヒトらしい生き方を知らぬ子供の扱いに苦労はしたが、Aは賢かった。

見様見真似から始まった学は際限なく吸収し、知識に関しては理数学者や考古学者を相手にしても柔軟に学を吸収していった。

洞穴育ちで岩を削っていた姿を確認した通り、特に鉱物学分野に興味を強く示した。

そのためゲーチスは、メジャーなものから希少価値の高いものまで、ありとあらゆる鉱石を取り入れ、専門家でさえ扱いに難渋する専門書をも与え続けた。

…しかし、森でポケモン達と育った拾い子Nが持っていて、

洞穴で独り育った拾い子、Aが唯一得られなかったものがあった。

それはヒトとして在るべき心の表現方法。

…そう、''感情''である。

こればかりは流石のゲーチスにもどうにも出来なかった。

Nの部屋にいた女神の1人と接触させてみたこともあるが、何の収穫も無く終わり完全にお手上げ状態であった。

そこでふと思い至る。

…己は少女に何を求めているのか、と。

Nは純粋で愚鈍な傀儡とするために拾った。

理想を追い求めるように言って聞かせていた。

しかし、Aはどうだろうか？

彼女は理想を持たず、常に目の前にある真実のみを
見つめている。

それはイッシュ建国伝説に残る
双子の英雄の片割れを思わせるものであるが、

盤上に少女を置く場所は無い。

配置場所も役割もない過剰な余り物…

けれど捨て置くことは出来なかった。

ゲ「……まさかワタクシが傾かない様になんて、

何と愚かなことでしょう。」

無いと信じたい…

けれど万が一、己が心がNへ傾いてしまえば、

長年掛けて進められてきた計画は
根本から崩れてしまうだろう。

そうならない為の存在がAなのだとしたら…

ゲーチスは自嘲した笑みを浮かべ、
拾い子の居る部屋へ歩みを進めた。