無機質へ色彩という祝福を─── (ページ20)

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疑問(RR団との交流1) ページ20

案内されたどり着いたのは保護区だった。

保護区はエーテル財団に保護されたポケモン達が暮らしており、現在は占拠しているRR団員が周囲を見回っている。

フラ「珈琲と紅茶、どちらがお好きですか？」
貴「……紅茶でお願いします。」
フラ「砂糖とミルクは如何しますか？」
貴「不要です。」

手際良く準備され、差し出されたカップにはほのかに香る紅茶が注がれていた。

一口含むと、上品な香りが広がる…

カップを置くと向かいに座るフラダリと視線が合った。

フラ「さて、私はアナタに興味があります。

父ゲーチスさんに似て聡明、勤勉で、落ち着いた雰囲気…そして思想、非常に興味があります。」

貴「父の願う夢が叶えば、それで良いのです。」

フラ「父上想いのよく出来た娘さんです…では、質問を変えましょう。

アナタにとって美しい世界とは、どのようなものですか？」

貴「…美しい世界？」

フラ「私はカロス地方で、争いのない美しい世界を目指し、今ある命を減らし作り直そうとしました。

貴方はポケモンを知らない世界を生きていたと聞きます。
人は昔から今に至るまで、醜い争いを繰り広げてきました…

アナタの瞳に争い合う人は、果たしてどう映っているのでしょうか。」

貴「……アカギ様も、同じようなことを言っていました。

しかし心を消し去るということは、''自分が自分で無くなる''ということ…

自我を失えば、自他の境界をも失う事になります。

それは果たして、美しいと言えるのでしょうか？

善悪も、美醜も、優劣も存在しない世界で、

誰がその基準を決めるのでしょうか？」

それは1度傷付いた心に蓋をし、忘却へ押しやることで無いものとした少女だからこそ抱いた疑問である。

自分が誰で、誰が自分なのかさえ分からず、
ただの無機質な世界を形もなく漂っていた。

その中から彼女の心を彼女たるものとして形作り、境界を創り出した者…それが父ゲーチスである。

貴「ヒトがヒトで在り続ける限り、''美しい世界''を見ることは出来ないのかもしれません。

…命を減らすことは、選択の1つでしかありません。」

賛成とも、反対とも取れぬ判断。
かと言って、迷っている訳でもない。

彼女は何者なのか…

貴「でも…」

フラ「…？」

貴「色々な鉱石が生まれるこの世界自体は……神秘的で美しいのだと、思います。」

フラダリの目の前に座るそれは、

父を愛し、鉱石を愛する
無垢な少女そのものだった。